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コラム

CradlePlusライターの特選コラム。ジャンルやテーマを問わず、魅力ある庄内のあれこれを掘り下げてご紹介いたします。

ふらっと立ち寄れる「場所」を作りたかったんです2019/09/03

「古民家カフェわだや」林千歩さん

遊佐町は地域おこし協力隊が主となり「遊佐町空き家再生プロジェクト」を発足。空き家をどんどん利活用し、みんなで楽しもう!といった取り組みだ。 2018年5月にはプロジェクトの第一弾として「古民家カフェわだや」がOPEN。今回は利用者第一号の、店主・林千歩さんを訪ねた。

林さんが開いた遊佐町の「新しい場所」

人に与える第一印象というものが苦手な私。

昔から内弁慶だったのでできるだけ素早く一発目を終わらせたくなる。そういう意味では第一印象から「素敵オーラ」満載の人に会うと軽く嫉妬するくらい羨ましくなるのだ。
林さんもそんな「素敵オーラ」を放つ女性のひとり。とにかく微笑む笑顔がとっても印象的な癒し系で「だいたい14時過ぎに…、でももう少し遅くなるかも」というアバウトなアポにも関わらず快く迎え入れてくれた。

林さんは2年前に、山好きが高じて「遊佐町地域おこし協力隊」のメンバーとして赴任したご主人と一緒にこの町にやってきた。
元々宿で働いていた林さんは「いつか自分でも」と宿を経営するためのノウハウを勉強中で、「民宿」や「民泊」、「宿と併設のカフェ」など、宿泊をテーマにした構想が頭にあったが、遊佐町で暮らし始めたことで「気軽にお茶ができる場所」、「女性同士やひとりでふらっと立ち寄れる場所」があったら、ということに気がついた。

そこで「まずは場所作り」という本人の希望と「空き家再生プロジェクト」で持ち上がった「オーナー募集」の案件がマッチング、町役場の方の後押しもあり林さんがカフェをするということで着工がはじまった。

簡単なようでこんなタイミングってそうそう無い。やはり林さんの「素敵オーラ」パワーかしら。と思ってしまう。

お店づくりのためにまず手がけたのは業者さんによる水周りの工事、その後DIYによる補修作業が続いた。DIYは地域おこし協力隊の女性メンバーを中心に、地元の大工さんや左官屋さんなどに指導をお願いし、床の張替え、洋間の壁紙の張替え、壁のペンキ塗り、障子の張替え、駐車場からのお店入り口までのアプローチ作り(なんと山から運んできた石で作ったのだとか!)そんな風にして総勢30名の人の手をかりながら1ヶ月半かけて完成した。

現在店内は、1階にある8畳と6畳のカフェスペースと、奥には英会話やミーティングなどレンタル利用ができる8畳の洋室、2階にはカフェスペースと同じ間取りの落ち着いた和室が広がる。

「最近洋室でウクレレ教室をやってみたいっていう方が試しに弾いていかれたんですが、すごく音響がいいみたいで」とにこやかに語ってくれた。

遊佐産の具材がたっぷり詰まった「おやき」を召し上がれ

「古民家カフェわだや」のおもてなしメニューは「おやき」。

きっと何度も同じことを聞かれたに違いないと思いながらも、「長野ご出身ですか?」と聞いてしまった。

答えは
「あ、いえ、おんなじ山形です。尾花沢です」

またしても定形文ばりに「あ、スイカですね。えーでもなぜおやき?」と尋ねると、

「箸やフォークなんかを使わないで手で食べられるものがいいな、って思って。この場所では気兼ねなく過ごしてもらいたいので、お子さんでも食べやすいようにと思ったらおやきにたどり着いたんです」

となんとも愛情あふれるおやきストーリー。私の「おやき=長野出身」という安直な考えは見事にかき消された。

具材も遊佐町産の小豆でこしらえた「あんこ」や、遊佐町オリジナル「遊佐カレー」、昔から町の人々に食されている特産のニンニクをたっぷり入れた「メロン子肉みそ」と、遊佐愛もたっぷりと込められている。

私がいただいたのは「メロン子肉みそ」で、少し甘めの皮とお惣菜のような具材、そしてガツンと香るニンニクがとっても相性がいい。おにぎりでもなく、パンでもなく「おやき」ならではの「ほっこり感」がこの古民家と合うではないか。

少し離れた客席に座っていた女性に、クレードルの小林編集長が「こちらに来たのは、はじめてですか」と声をかけると「いえ、2回目なんです。川西町から遊佐の湧水巡りに来た帰りで。ここのおやき、とっても美味しくて」と、偶然にも遠方からのリピーター。手土産にも4つほど購入されていた。

「蒸し時間に15分ほどかかるので、時間はかかるんですが、お土産や山に登る時にも持っていってもらえたら」と林さん。
遊佐町の新しい場所に加えて「手土産」にも名が連なりそうな新しい逸品だ。

一年を振り返ってみての感想

スペースを持つというひとつの目的を達成した林さん。この1年、理想には近づいているかと聞いてみると

「うーん。まだまだですね。おやきを作りながら、接客をしながらの時間の中なので・・・。もともと民家として建てられた家なのに人の出入りも増えたので、建物への負担が多かれ少なかれあるようです。でもオープン前のDIY事業で先生にいろいろと教えていただいたおかげで、看板や竹垣を作ったり、雨戸や廊下の補修をするなど、自分で少しずつDIYをして、おうちとお付き合いしながら、ちょっとずつ理想に近づけたらいいなって思ってます」

そう答えると、さっきまで店内に流れるBGMのジャズに酔いしれていた小林編集長が

「…あのね、そう簡単に理想に近づかなくってもいいと思う。少しずつ達成する時間を楽しんでね。寄り道は大事だから」とアドバイス。

そうかもれない。ここに来るとなんとも言えない「古民家カフェ」ならではの時間が流れているもの。

温泉で知り合った地元のお母さんが町案内

元々湧水巡りなどが趣味の林さんは、過去に遊佐町に何度か足を運んでいた。そこで町にある温泉施設「鳥海温泉保養施設あぽん西浜」にてオススメの場所を得る情報収集を試みた。

「温泉に浸かりながら地元のお母さんたちが本当に詳しく教えてくれて。温泉を出た後にも車で湧水スポットに案内してくれたりして(笑)。その頃から遊佐町の印象がよかったんですよね」

そんな林さんご夫妻、地域おこし協力隊の任期はあと半年。任期が終わっても今のところは「遊佐町に残る」選択肢をしているという。

雄大な鳥海山の麓に住む、おおらかな人柄とおおきな懐に包まれて過ごす暮らし。ぜひ寄り道を楽しみながら、林さんの理想とする場所づくりができますように。今度またふらっと「古民家カフェわだや」の時間とおやきを味わいに行こう。

古民家カフェ わだや
山形県郡遊佐町吉出字和田3-5
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:木曜日・金曜日
(営業時間・定休日は変更となる場合あり、要問合せ)
Tel.0234-31-8650

この記事を書いた人
本間 聡美

本間 聡美Honma Satomi

山形県庄内在住のフリーランスフォトグラファー。地域の広告、各種出版物などの取材・撮影の傍ら、庄内の様々な魅力を伝えるべく活動中。

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