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【連載】四十路のハイジ 第6回 山の人、海の人

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【連載】四十路のハイジ 第6回 山の人、海の人

2019/10/01

月山は紅葉真っ盛り

こんにちは! 8月いっぱいでに女将が下山し、9月は主人と二人体制で営業していたため更新に少し間が空いてしまいました。

そうこうしている間に、山はすっかり秋! 1週間経つと景色が変わっているのが月山の素晴らしさでもありますが、自然の儚さも感じセンチメンタルになりそうなところにお待ちかね! 佛生池小屋の後ろにあるオモワシ山が紅葉真っ盛りです!

小屋の後ろに見える小高い山がオモワシ山です

9月26日から急に色が鮮やかになり毎年紅葉を見に来ている方々も「今年は最高に綺麗だね!」とおっしゃいます。私はまだ3年目なのでタイミングがわからないのですが、去年と一昨年は23日に見頃を迎えたので、それからすると今年は数日遅れての真っ盛りを迎えました。

そうそう、「オモワシ山」面白い名前ですよね。ちょうど三角に小高くなっているので佛生池のあたりまで登ってくるとあれが頂上かな?と思わせるので「オモワシ山」と呼ばれるようになったようです。

実際に見るともっと色鮮やかなのです私の写真で伝えることができない美しさが目の前に

山の人

一昨年紅葉の時期にいらした方から「涸沢カールよりも綺麗だよ!」というお言葉を頂戴しました。それからというもの「月山の紅葉はどうですか?」と質問を受ける度「涸沢カールよりも綺麗だとおっしゃっていたお客様もいますよ。」と若女将の一つ覚えで答えていました。

涸沢カールといえばテントがひしめく写真を登山雑誌で見たことがあったので、きっと有名で人気のあるところなのだろうとは思ってみたものの、どこにあるのか?カールが何なのだか、全くわからない若女将であります。

そう、四十路でハイジになりましたが何を隠そう山事情が全くわかりません。山へ登ったのは、小学生の時に富士山8合目までと中学の遠足で景信山、大人になって高尾山2回と丹沢のどこかの山と白山、そして月山です。ですので、お泊まりのお客様同士が夕食時「どこどこの山が良かった、次はどこどこの山に行きたいの」という情報交換で盛り上がっていても私にとってはまるで暗号です。

素晴らしいのなら行ってみたいなと漠然と思うだけで、山行においての今現在の熱い思いは雷鳥を見てみたいということくらいなのです。ネタが雷鳥だけではついて行けそうにない、あの熱い会話に混じることができるようになりたい若女将であります。

オモワシ山に登って佛生池小屋を見下ろす
燃える様に真っ赤な楓
熱い会話の前に紅葉の景色に混じってみる

海の人

ある日、佛生池小屋に通ってくれている方が「若女将と話が合うと思って」とお友達を連れてきてくださった「海が好きだっていうから」と。

「も、潜るんですか?」「ダイビングですか?シュノーケリングですか?」「えー!いつもどの辺に行くんですか?」「沖縄の島もいいけど、台風気にしなきゃいけないのがねぇ…」「それがね、台風気にしなくていいところがあるのよ」「ムムム、一体どこですか?」「ニューカレドニア!」「海外ですか! リッチですね」「それがね安く行けるのよ!」「行きます!!!」と怒涛のように話は続き、多分鼻の穴はまん丸のお月様のようになっていたかと思います。

そう私は元々海の人、海にだったら一人でも行ってしまうほどで夏が来るたびにシュノーケルで海に潜るのがかけがえのない楽しみでした。沖縄にも通い、サンゴ礁の保全活動も始めてしまったほどなのです。(こちらのサイトがその活動、今でも毎月開催中です。)

久々の海の話に興奮したな~とホクホクした次の瞬間、夕ご飯時の熱い会話はこれなのか!と気がつきました。海の話題だったら自然に熱くなる私がいるのでした。

夏といえば海だった、波照間の浜辺
まだ前世は人魚だと信じていた、三十路の海女だった頃

山と海

修行体験で月山に登ったのが2014年、久々の山体験でした。海をよく知ってから山に入るとおやおやおや?山と海は真逆の場所だと思っていましたが、山の景色や音に海で見たり聞いたりするものと沢山の共通点を見出したのです。飛ぶ鳥は魚の様ですし、風で葉が擦れる音は波の音に似ていて、生い茂る草木は海底の海藻やサンゴと同じに見えます。

大きな違いは地に足がついているかいないかでしょうか。足のつかない海の中が、私にとって一番身体を自由自在に動かせる場所です。山にいること自体は気持ちがいことですが、重い荷物を背負って登る時は一歩一歩が負荷でしかなく、これのどこがレジャーなのか?と思う元海女なのです。

そしてうちの屈強な山小屋主人ですが、海が苦手で足がつかない状態で浮いているだけで酔ってしまう様です…。親友の父上にも山小屋出身の方がいまして、海外のどこか有名な山へ日本人で初めて登頂した記録も持っているのですが、今までで一番怖かったことを聞かれるとスキューバーダイビングだと答えるそうです。

どうやら同じ人間でも山の人、海の人が存在する様ですが、山と海に同じ景色を見出した元海女が四十路でハイジになれた様に、海を怖がる山の人に海の中の景色をもう一度じっくり見てもらいたいなと思っています。ですが、そんなややこしい事の前に涸沢カールの“カール”が何なのか調べなくてはならない気がする若女将であります。

行者ヶ原にも日々美しい秋のグラデーションが広がり始めています
9月27日のご来光今年の営業も残りわずかです
この記事を書いた人

Kazama Emi

東京の海抜0メートル地帯で生まれ、40歳で鶴岡へ単独Iターン。月山が開く夏の間は、嫁いだ主人の営む月山佛生池山小屋へ移動し山で暮らす四十路のハイジ。本業はイラストとデザイン、夏の間は標高1,745mからデータ送信しています。

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