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【連載】四十路のハイジ 第2回 今年も山は開いて

暮らし・ライフスタイル

【連載】四十路のハイジ 第2回 今年も山は開いて

2019/07/30

四十路のハイジ、山小屋へ移動

今年は私が山に上がれる日にちが直前まで決まらなかったため、主人と山小屋女将である母上は先に山に上がっていました。

里での用事を全て済ませ、それぞれクレードルプラスに関わっているフォトグラファーの本間聡美さんとライターの中村薫さんとで進捗の報告がてら純喫茶「ぼんじゅーる」にてお茶という下界の楽しみを満喫し、そして6月29日、山へ向かいました。

3年目になり一人で山に上がることには慣れましたが、出がけに主人に渡された発砲スチロールの箱がいつもより大きいものだったのでついつい詰め込みすぎて、しかも私の背負子についてるゴムの長さがこの箱のサイズには足りず、しっかり固定できずにグラグラで背負って自力で立ち上がるまでにかなり難儀し先行きが不安になりました。

案の定、弥陀ヶ原へ向かう木道の途中で背中の筋肉が引きちぎれるような痛みに襲われ、早々主人にギブアップメールを送ってみるも一向に既読になりません。諦めて、痛みから気を外らせつつ休み休み上がって行きました。

今年は雪が多く残っていることは、6月の初めにあったヘリコプターでの荷揚げ作業で確認済みでしたが、この時にもまだ随分と雪渓が残っていました。

雪渓の入り口に足を乗せるとズボッと抜けてしまい、落とし穴に落ちたような状態に。荷物が重くて脚が上がらず、半端に上げても雪が崩れて穴が広がる一方で携帯に目をやるもまだ未読……。

誰かに見つかって「佛生池小屋の若女将埋もれてっぞ」と言われるのも恥ずかしいので渾身の力を振り絞りなんとか自力で脱出し、やればできるものだなと感心しながら歩みを進めました。

2つ目の雪渓では一瞬迷子になり、どこから登山道に戻るのかわからなくなってしまい困っていると「ガサガサッ」と音がしました。

振り向くと、雪渓に出てきたのは月山筍を同じ採り場で採っている名人でした。背中には筍をずっしりと背負っていて辛そうな顔つき、私も負けず辛い表情をしていたのか「ゆっぐり休み休みいげ」と声を掛けられ、お互い気持ちを察しながら行く先を目指しました。

荷物との戦いと雪景色で、どの辺を歩いているのか頭が回っていなかったのですが、やっと主人が現れ荷物をパスし救われた喜びで小走りで進むと、呆気にとられるくらい直ぐ小屋が現れました。

ほっとする瞬間、これから3ヶ月ここが我が家です。

これが背負子です。ザックより楽で山男の仲間入りできたような気分になり気に入っています。
重い荷物での雪渓は苦行でしかありませんが、振り返ると広がる景色に心身ともに癒されます。

令和元年開山祭

7月1日、月山本宮の開山祭が行われいよいよ夏山が始まりました。

今年は月曜日でしたので人出は去年、一昨年と比べて少なめでしたが懐かしい山の面々が次々と寄って下さいました。

お客さんが来てくださることはとっても嬉しい、お店だから当たり前のことかもしれませんが、今までフリーランスで家や仕事場で一人黙々と仕事をしていて、突然人が訪ねてくるという事がなかったのでなかなか新鮮で嬉しい事に思えます。

代わる代わるお客さんが寄って下さいます。
やっと山に活気が戻ってきました。
常連のお客様は粉チーズ持参!〆にスープにご飯を投入してカレーチーズリゾットに。

宿泊のお客様との愉快な時間

そして宿泊も始まりました。毎年出羽三山にお参りに来てくださるお父さん方や初めての方、外国からの方もお見えになります。毎年のお父さん方がいらっしゃると飲めや歌えの大宴会になる事もあり、楽しい夜が繰り広げられます。

天気が良い時はみんなで夕景を眺めて撮影大会です。お泊まりのお客様からいろいろなお話を聞けるのも山小屋の大きな楽しみなのですが、今年はどんなお話を聞くとこができるのでしょうか?

毎年お参りに来る福島のお父さん方。お酒を水のように飲んで「勝手にしやがれ」を歌って笠を投げた瞬間を激写。
綺麗な夕景に大人もはしゃぐ瞬間。
お客様がお泊まりの時は朝日や夕焼けが出るとほっと一安心。
2年前にスペイン巡礼された77歳のお父様。この日も最上川から羽黒まで歩いたとのこと!落日を見ながらカンツォーネを高らかに。
山に上がる前は里に未練もたらたらですが、上がってみるとやっぱりお山は最高です。
この記事を書いた人

Kazama Emi

東京の海抜0メートル地帯で生まれ、40歳で鶴岡へ単独Iターン。月山が開く夏の間は、嫁いだ主人の営む月山佛生池山小屋へ移動し山で暮らす四十路のハイジ。本業はイラストとデザイン、夏の間は標高1,745mからデータ送信しています。

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