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【連載】四十路のハイジ 第3回 天上の花畑

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【連載】四十路のハイジ 第3回 天上の花畑

2019/08/10

去年の月山は7月後半から雨の日が多かったのですが、今年は今のところ天候に恵まれています。日差しが強い為、小屋にも冷たい飲み物やソフトクリームを求める登山者の方々が連日ひっきりなしでした。そんな毎日が続いたので、さすがにハイジも四十路の為疲労が出始めたところです。夏山期間も半分近くになってきたため、お寿司や赤身肉のステーキ画像が脳裏をかすめるようにもなってきました…

月山は信仰の山として知られていますが、お花の種類も多く高山植物愛好家の方にも大変人気の山です。今年は雪解けが遅かったため花の成長が遅れ山の人達は心配していましたが、期待を裏切ることなく美しい天上の花畑が現れました。

山に上がると出かけることはなく、散歩も小屋の周りだけになります。しかし、小屋の周りだけでもこのような美しい高山植物にお目にかかれるのです。日毎に花が咲いてゆくので、その変化を収めるべく毎週写真を撮りに訪れる愛好家もいらっしゃいます。1週間すると景色が変わるので、夏山期間中何度訪れても感動があるのが月山の魅力の一つだと思います。

佛生池小屋の周りには特にハクサンフウロが咲き乱れます

登山者の皆さんを和ませてくれる花々ですが、疲労した私の心も癒してくれる有難い存在になりました。しかし私は40年東京のコンクリートの上で暮らし、花はお花屋さんで選ぶものだと思っていました。ですので野に咲く花を観察したり識別する習慣がなく、なかなか花の名前を覚えることができません。主人と山を歩いて花を見る度に繰り返し名前を聞き、やっと少しずつ覚えてきたところなのです。

小さな白い花を見ると名前を尋ねたくなるので、私はそういった可憐な花が好きなのだと気づきました。一時期妖精の研究に勤しんだ私にとっては、花の終わった後の実をつけたチングルマが妖精の頭のようで特別愛おしく感じます。そして見る度に昔お菓子の景品だった“サバサバ鉛筆”を思い出すのですが、昭和すぎてわかる人は少ないかもしれません…。

ちょっとエキゾチックなヨツバシオガマ
朝露が輝く、アオノツガザクラ(手前)とチングルマ白く小さなお花は健気で愛おしい

何度花の名前を聞いてもなかなか覚えられないので、あまり興味がないんじゃないか…とうっすら不安に感じつつ、かつて長年クラシック音楽の仕事をしていたにも関わらず全部同じ曲に聞こえていたのが、ある日突然色鮮やかな世界が広がった感動が高山植物に対しても訪れる日を期待しているのです。そんな私ですが動物(特に鳥)に関しては興味津々名前もすぐにいくらでも覚えられるので、月山の動物たちのこともいずれ書いてゆきたいと思っています。

多く見られる花ですが、品格があり美しいハクサンチドリ。葉に濃い赤紫の斑点模様があるウズラバハクサンチドリは月山では割と多く見られる花ですが登山者の方にとっては貴重な花のようです。
ヨツバシオガマ(中央)とウサギギク。パソコン仕事による肩こりでお世話になっているアルニカオイルのアルニカがウサギギクだと最近知り、手を合わせて感謝しました。

晴れれば日差しが強いと言えども、足を止めれば天然のクーラーが頬をかすめます。里は暑く寝苦しいと登山者の方々から伺います。山は日が落ちれば涼しいです、寝不足の方は月山でのんびりぐっすりと眠りにつくのはいかがでしょうか?お花もまだまだ綺麗ですし、晴れれば満点の星空も楽しめますよ。

夕陽に染まる佛生池。本当に信じられないような美しい景色が山には現れるのです。

この記事を書いた人

Kazama Emi

東京の海抜0メートル地帯で生まれ、40歳で鶴岡へ単独Iターン。月山が開く夏の間は、嫁いだ主人の営む月山佛生池山小屋へ移動し山で暮らす四十路のハイジ。本業はイラストとデザイン、夏の間は標高1,745mからデータ送信しています。

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