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【連載】離島メガネ② アラメのリズム

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【連載】離島メガネ② アラメのリズム

2020/06/08
アラメを積んだ船

ガシャンガシャンと歯切れのよいリズムが聞こえてくれば、アラメ漁の時季がやってきた知らせだ。飛島でいうアラメとは、正式にはツルアラメのことで、日本海に生育している海藻である。ワカメが漢字で「若布」と書くのに対して、アラメは「荒布」と書く。その名のように表面がでこぼこした形状をしている。

アラメは漢字で「荒布」

海中ででこぼこを保っているわけだから、生のアラメは全体が硬い。食べるにしても保存するにしても、このままでは使いづらいので細く刻むことになる。昔は包丁を使って手作業で切っていたが、桑の葉を断裁する機械を改造したものを本土から導入してからは格段に作業が楽になった。島のあちらこちらでリズミカルにアラメが刻まれていく。

島の漁業は、集団では行わず個人での仕事が基本だ。漁師はひとり1隻は小型の船を持っており、狙う魚種を決めて1日の時間割を設定し生業に取り組む。自ずと得意分野ができあがり、島全体では少量だが多品種の水揚げがなされる。そんなフリーランス漁師の文化の中にも、時間と場所を合わせて集団で行う漁が存在する。そのひとつがアラメ漁である。アラメ漁は、天気をみて出欠航を判断する「日和見」により、早朝に漁の有無を連絡する。漁が行われる場合は、「開始は午前8時、終了は午前9時半」と時間を決める。漁師たちは出航の30分前くらいには船に乗り込み始める。定刻になるとエンジンを吹かし、まるで競艇のように海を走り抜けていく。アラメがよく生えている場所の陣取りである。長年の経験で、アラメが生えやすい場所や自分の取りやすい場所がある。ただし、実際にアラメが多い場所は毎年確かめないと分からない。私が思うに、ワカメ漁のときにでも、さりげなくアラメの様子をうかがっている。

箱メガネで海を覗く

漁の始終は漁業代表が目印の旗を掲げることが合図となる。旗を確認したら一斉に海の中をガラス箱(木箱の底にガラスを貼った漁具)で覗き込む。細かく船を操作し、とりやすい場所に調整したら、タモガマ(タモ網に刃を付けた漁具)をアラメの根っこあたりに沈めて刈りとる。

タモガマ

岩場をただ這わせるだけではアラメは刈れない。水圧に逆らってタモガマを小刻みに上下させながら進めることで網の中にアラメが溜まり始める。そして、刈りとった分だけ重くなったタモガマを海中から引き上げ、ようやくアラメが水揚げされる。この動作を繰り返し、再び旗が上がるまで刈られたアラメは、山盛りに積まれて港に持ち込まれる。

アラメを刻む機械
刻まれたアラメ

刻まれたアラメが食卓に並ぶ前に、アク抜きのために二度茹でられる。口に運ばれていく頃には、荒々しく硬かった海藻は、ほどよい食感となっている。きっと、私が知らないところで脈々と受け継がれる暮らしは幾多もあって、聴いたこともないようなリズムを刻んでいるのだろう。

アラメ煮
この記事を書いた人
松本 友哉

Matsumoto Tomoya

1988年山口県生まれ。2012年に山形県の離島・飛島に移住し、島の仲間たちと合同会社とびしまを設立する。社内では、企画とデザインを主に担当。飛島を舞台に新しい自治体のかたちを模索中。
 

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