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【連載】離島メガネ⑤ 漂着物

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【連載】離島メガネ⑤ 漂着物

2020/09/14
漂着した漁業用のウキ

海が荒れる前は、雲が消え去り大げさなくらい青い空が広がる。島から見る鳥海山は山裾の端っこまではっきりとしており、地形をそのままなぞっていくと風車や建物が見える。夜には灯台の明かりや自動車のライトまで確認できることがある。

本土がよく見えたら時化る

風が吹き始めると海面は盛り上がって次第にしぶきを上げる。島の人たちは時化(しけ)には慣れているので、驚きもせずにじっと家の中で波風が収まるのを待っている。

荒れる海

時化の後に島を歩くとあちこちに様々なものが流れ着いている。海中から引きちぎられた海藻や、根っこのついた流木、色々な形をしたプラスチック製品などで海岸はすっかり覆われている。例年は島内外のボランティアによる海岸清掃が行われるが、今年は多人数が集まるイベントが中止になり海岸には漂着物が取り残されている。近年、海岸の漂着物は「海ごみ」として社会問題となっている。

流木の表面

少し昔の飛島なら、海岸の漂着物はきれいに回収されていただろう。島にプロパンガスが普及する昭和40年代まで、島の人たちは森林や野原から燃料を手に入れる必要があった。しかし、この狭い自然環境から採集できる燃料には限りがある。海が時化るたびにやってくる漂着物はごみではなく貴重な資源であり、特に流木は競い合うように拾われた。プロパンガスは、燃料採集の苦労を解消し島の生活を劇的に楽にした。一方で拾われなくなった流木は海岸に放置され、更に戦後爆発的に普及したプラスチック製品が流れ着くようになった。

漂着した瓶

海岸を歩けば世の中でどういったものが流行っているのかをうかがい知ることができる。そろそろ使い捨てマスクや使い捨て容器が流れ着くのではないかと想像している。島ではまだ確認できていないが、他の場所では使い捨てマスクの漂着が増大しているそうだ。代表的な海ごみのひとつであるレジ袋は、今年の7月から有料化されたので漂着する機会が減るかもしれない。しかし、レジ袋に変わる新しい海ごみが流れ着くこともあるだろう。

シーグラス

あるとき良いと考えたことが、別の場所や先の時間では問題になることもある。私たちは様々な仕組みに繋がれていて、この小さな離島でもそれを断ち切ることはできない。自分から流れ出ていくものは、どうせなら誰かにとって価値になるものであってほしい。そういえば、小さい頃は海岸で宝物を探して歩いていた。漂着した瓶を拾い上げるたびに、中に宝の地図が入っていないか確認したものだ。現代では、自分の考えや行動を世の中に漂流させる方法はいくらでもある。あとは競い合うように拾われる漂着物について想像してみたい。


合同会社とびしま
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この記事を書いた人
松本 友哉

Matsumoto Tomoya

1988年山口県生まれ。2012年に山形県の離島・飛島に移住し、島の仲間たちと「合同会社とびしま」を設立する。社内では、企画とデザインを主に担当。飛島を舞台に新しい自治体のかたちを模索中。
 

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