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【連載】離島メガネ③ トビシマカンゾウのまわり

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【連載】離島メガネ③ トビシマカンゾウのまわり

2020/07/10
トビシマカンゾウの正面

飛島には、食べられる花がある。そう聞いても山形県内では、「もってのほか」という食用菊が郷土料理として親しまれてきたし、一般的に食べられるブロッコリーやカリフラワーも花を食べているので驚くような話ではないかもしれない。しかし、エディブルフラワー(食べられる花)というジャンルがあるくらいなので、人によっては珍しく思うこともあるだろう。

さて、飛島のエディブルフラワーは「トビシマカンゾウ」である。この花は、島内に自生しており高山植物のニッコウキスゲ(ゼンテイカ)の変種である。国内では、飛島と佐渡島にのみ分布している。初めて発見された場所として飛島の地名が採用された。開花時期としては、6月中旬から7月上旬が最盛期で海岸一面に黄色の花を咲かせる。細い茎が空へ長く伸びて目一杯に花弁を開くものだから、少しの風でも影響を受けていつも頭を振っている。

トビシマカンゾウの全体

トビシマカンゾウは、この時期の観光客にとって来島目的の一つになっており、鑑賞して楽しまれているのだが、かつての島民にとっては食べられる植物として身近だった。春先の地面に顔を出した新芽は摘んでお浸しにし、まだ小さいうちの茎は味噌和えにする。花弁は摘んで塩漬け、酢漬けにして保存食にする。茹でたジャガイモに塩抜きした花弁とドブロクの粕を入れて「ハナガスゼ」という料理にした。また、花が枯れると葉を乾燥させて草履を編んだり、茎に海岸に流れ着いた硫黄を塗ってマッチにしたという。

花を摘む

島に暮らす仲間と実際に花を摘んで塩漬けにしてみようという話になった。ところが、飛島は1963年に指定された鳥海国定公園の一部となっており、この花の採取には県の許可が必要だった。私有地に植えられているものなら問題ないということで作業にかかった。花を摘んでいくことには少しためらいがあって、「まだ咲いているのに」という鑑賞する花としての感覚が付きまとった。塩漬けは、花弁をがく片から取り外し塩水に一晩つけて、萎びたものをきつく絞って水を切り、更に塩を振って容器に保存する。塩抜きしたものを調理してみると、味は無いがサクサクと歯ごたえがよく、なによりも食卓に彩りを添えてくれる。

花弁を取り外す
塩水に一晩漬ける

近年、トビシマカンゾウは減少傾向にある。県内の絶滅のおそれのある野生植物をまとめた2013年版『山形県レッドリスト(植物版)』には、「絶滅危惧種」として掲載されている。この花は日当たりのよい場所でなければ育たない。ガスや石油といった化石燃料が普及するまで、島の燃料は自生する植物が主でススキやオオイタドリなどを活用した。調理や風呂、暖房などに燃料は欠かせないので、島の大地は綺麗に刈り取られ、日当たりが良く結果的にトビシマカンゾウが一面に広がった。それが生活様式が変化し、薮の中に埋もれ数を減らしている。

絞って更に塩を振る
酢の物に添える

最近は、観光資源として保全しようと行政が予算をつけ、有志を募って数を増やそうとしている。風に揺られるトビシマカンゾウは、人の生活からも様々な影響を受けている。しかし、実は、太い根が広がり硬い岩場にもしっかりと根付いている。これからこの花のまわりでは、どんな変化が起こるのだろうか。

参考文献:チーム「あるく・みる・きく」編『飛島』東北芸術工科大学 東北文化研究センター(2009年)


合同会社とびしま
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この記事を書いた人
松本 友哉

Matsumoto Tomoya

1988年山口県生まれ。2012年に山形県の離島・飛島に移住し、島の仲間たちと「合同会社とびしま」を設立する。社内では、企画とデザインを主に担当。飛島を舞台に新しい自治体のかたちを模索中。
 

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