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庄内食べ放談 第1回
「ふたりのスペシャリテ」
奥田政行シェフ×太田舟二シェフ

食・食文化

庄内食べ放談 第1回
「ふたりのスペシャリテ」
奥田政行シェフ×太田舟二シェフ

2025/07/24
(右)奥田政行/Al ché-cciano(アル・ケッチァーノ)
(左)太田舟二/Restaurant Nico

初回のゲストは酒田市のRestaurant Nicoオーナーシェフ、太田舟二さん。お父様の故太田政宏さんはこの土地に洋食文化を築いた偉大な料理人で、奥田シェフの憧れの人でもありました。お父様が生前話していた「料理人はスペシャリテを持ってほしい」とはその店でなければ味わえない料理を持つこと。その一皿のために人が訪れ、料理人が輝けるようにと願った、庄内の料理界の未来に寄せた愛のメッセージでした。


奥田 今思うと、誰かを想って作った料理がスペシャリテになってます。例えば「藤沢かぶ」は種が途絶えるかもしれないと知って、どうにかしようって僕がやったのは「好きになること」でした。藤沢かぶを好きだ好きだと食べ続けて、げっぷが出て相手の悪いところまで見えるくらい食べた時に〝豚の脂〟がほしくなって「藤沢かぶと山伏ポークの焼畑風」ができました。それが全国区になった。お客さんからも求められて、自分にもいい影響を与えてくれる。スペシャリテは両想いなんです。

太田 自分にとっては、ずっと作っていこうと決めた料理ですね。「黒バイ貝のコロッケ」の原型は古典的なフランス料理の「西バイ貝のブルゴーニュ風」ですが、クラシックな料理を自分なりにおいしさを探しながら変化させていくのが料理の面白いところで。作り続けることで一緒に成長できる料理にしようと思いました。

奥田 恋愛と同じで、でも自分本位に好きで作る料理じゃなく「俺は君のここがいいんだ!」みたいに、食材のここを生かしたいと思って作る。だから恋じゃなく愛になってできる料理。


太田
 奥田シェフの「一切れのワラサと満月の塩」は食材の存在感が際立ってますよね。この皿がコースの最初に出てくるとまず考えさせられる。食材の持ち味がこうだからこういう味にしたんだなとか。考えながら食べることって疲れるんですけど、でも楽しい。自分はその疲れも含めて、レストランという場で食事をすることが好きなんです。

一切れのワラサと満月の塩

奥田 フレンチは哲学を食べる料理だから、食材に対する考え方も食べるとわかります。舟二くんの哲学は、食材の〝ここ〟を切り取って生かしてるんだなってわかります。それは舟二くんのお父さんの料理哲学とも共通していて、食材一つ一つを勉強して、自分が持ってる調理技術から選んで、食材が生きるようにしてる。その哲学を庄内につくってくれたから僕は今の料理ができるので、お父さんにはすごく感謝してるんですよ。

太田 酒田フレンチは、庄内の豊富な魚介を使うのが一つの特徴ですけど、酒田はよく時化るので、旬の魚を安定して提供するのは難しくて。そんな時でも「この食材が使えないならあの食材」「あそこに行ったらあれが出てた」とかそういう話が料理人としては面白いんですよね。

奥田 そう、庄内で料理をする醍醐味の一つ。庄内には季節ごとに食材の横綱があって、関脇も小結もいる。スペシャリテが生まれやすい土地なんですよ。

太田 食材や調理技術の話ができる人がもっと増えて集まったら、この土地で料理をすることがもっと面白くなるんじゃないかなと思いますね。

奥田 庄内は食材のバラエティは世界一。その優位性を生かして庄内でしかできない料理を作る。世界に一つ二つそんなレストランがあってもいいんじゃないかな。舟二くんもそんな伝説の店を作ってください。庄内の料理界の次の時代につながっていくようなね。

Restaurant Nico
酒田市亀ケ崎3-7-2 TEL/0234-28-9777
営業時間/昼11:30〜13:30(LO) 夜17:30〜20:30(LO)

Al ché-cciano(アル・ケッチァーノ)
鶴岡市遠賀原稲荷43 TEL/0235-26-0609
営業時間/昼11:30〜14:00(LO) 夜18:00〜20:30(LO)

Recipe

この記事を書いた人

Cradle Editors

庄内の魅力を発信する、出羽庄内地域文化情報誌「Cradle(クレードル)」を隔月で発行。庄内に暮らし、庄内を愛してやまないメンバーたちの編集チームです。

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