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庄内ふむふむふむ1「土門拳記念館」
鶴岡中央高校 生徒取材

アート・デザイン

庄内ふむふむふむ1「土門拳記念館」
鶴岡中央高校 生徒取材

2026/02/25

10代とともに地域を巡り、庄内の おもしろさについて考える新企画「庄内ふむふむふむ」。第1回は、2023年10月に開館40周年を迎える酒田市の土門拳記念館(※)に伺いました。

(左から)土門拳記念館 学芸員 田中耕太郎さん、鶴岡中央高校3年 髙橋雲水(もんど)さん、鶴岡中央高校3年 鈴木菜生(なつみ)さん

土門拳記念館って?

世界的な写真家、土門拳(どもんけん)の作品の大多数、約13万5千点を収蔵する写真専門の美術館です。年に数回写真を入れ替えながら展示を続けてきましたが、公開できていない作品がまだまだあるとのこと。また、1人の作家をテーマにした写真専門の美術館は世界的に見てもとても珍しく、1983年の開館時は国内唯一の写真専門の美術館でした。

周囲の自然環境と調和した外観。土門拳が愛した鳥海山も眺めることができる。

どうして酒田に?

土門拳は飽海郡酒田町(現 酒田市)で生まれ、6歳半頃まで暮らした後一家で東京へと移り住みます。再び酒田の地を踏んだのは47歳の時、山王祭(現 酒田まつり)の撮影仕事のためでした。久しぶりに戻った生まれ故郷で歓迎されたことを、とても喜んだそうです。そして、64歳で第1号の酒田市名誉市民に選ばれたことを機に、全作品を酒田市に寄贈することを決めました。「土門は、自らの粘り強くタフな性格は庄内の厳しい冬や豊かな自然に培われたものだと語っていて、庄内とは強いつながりを感じていたようです。にもかかわらず、『日本一の写真家になるまでは酒田には戻らない』と長年庄内を訪れなかったのは、とても貧しい幼年時代を過ごした土地、という記憶も影響していたんだと思います」と田中さんに教えていただきました。

外との心地よいつながりを感じながら、土門拳と深い関わりがあった彫刻家やデザイナーなどの作品も楽しむことができる。
1度に展示できるのは、多くて200点くらいです。

どんな写真が見られる?

寺を訪ね、建築や仏像を撮影した『古寺巡礼』は土門拳の代表的な作品シリーズの1つです。30代から撮り始め、脳出血を患い体の自由が利かなくなってからも精力的に撮影し続け、50〜60代に最も多くの写真を遺しました。お寺や仏像など、古くから日本に伝わるものを撮ることで、敗戦に落ち込む人々に日本人が持つバイタリティーを届けたいという思いが、撮影の原動力になっていたそうです。
「それまで撮っていた報道写真とは違い、動き回って撮影する必要がないという点で、病気をした後にも取り組みやすかったということもあるでしょう。ただ、重たい機材や車椅子、自身の体を弟子たちに支えてもらいながら冬山にも登ったりするわけですから、相当な熱意がなければ撮り続けられませんよね」と田中さん。並々ならぬ情熱と粘り強さがつくりあげた作品であることがわかりました。
また、当時お寺や仏像をここまで集中的に撮った写真家は少なく、顔や手などにフォーカスした撮り方は土門拳ならではだといいます。「実際に仏像を見に行ったら意外に小さかった、ということが何度かありました。それだけ迫力がある写真なんですよね」と実際にお寺を訪問した際のエピソードもお話しいただきました。

雪が降るまで1カ月間現地に滞在するなど、土門拳の粘り強さが感じられるエピソードが多い『古寺巡礼』の冬の作品。

子どもの写真もたくさん撮っている?

こ自身の子どもを幼い頃に事故で亡くしてから、子どもの写真をたくさん撮るようになった土門拳。「とにかく顔とか動きがいい子どもの写真がたくさんある」と田中さん、土門拳が撮る子どもの写真が大好きだといいます。土門拳の代表的な写真集の1つ『筑豊のこどもたち』は、国の強行的な政策転換で主要エネルギーが石炭から石油に切り替わり、閉山、失業に追い込まれた福岡県の筑豊地域の人々の暮らしを、主に子どもたちを被写体に切り取った1959年撮影の作品。10万部を超えるベストセラーになり、日本中に大きな衝撃を与えました。

撮られた 人たちはどう思って いる?

2022年、筑豊地域で初めて土門拳の展示を行った際、田中さんは当時を知る地元の人たちの生の声を聞いたそうです。「作品に写っていた子の友人の方が来てくださり『今でも撮ってもらったことを喜んでいる』とうれしい声を聞くことができました。一方で、『撮られたことで注目の的となり、嫌な思いをした』『撮られたことを後悔している』というような声、『作品のような極貧の地域はごく一部だったにもかかわらず、筑豊全体が貧しいような印象を与えたのではないか』という声もあり、写真というメディアのあり方をあらためて考えるきっかけになりました」。今回の展示には、写真集に採用されなかった写真と、事実のように見えて演出が入っていることに触れる解説があり、地元の声を聞いた経験が展示に活かされていることがわかりました。

写真集に載らなかったカットも見ながら、『筑豊のこどもたち』の制作の裏側についてお話しいただいた。「資料も含め収蔵点数が多い当館ならではの展示」と田中さん。

田中さんから皆さんへ

「当館では、長らく写真集に沿った展示を行ってきましたが、2年ほど前から展示ごとにオリジナルのテーマを決めて内容を構成しています。お寺や仏像、社会問題など、土門拳の代名詞となっている写真の迫力に触れていただくことはもちろん、『筑豊のこどもたち』が、情報メディアとの接し方という私たちが直面する問題を浮き彫りにするように、見た人が『今』を捉え直すきっかけになるような展示も企画していきたいと考えています。高校生は進学や就職で庄内を離れることもあるかもしれませんし、今のうちにぜひ来てみてください」。

土門拳写真美術館 ※「土門拳記念館」は、2025年4月から「土門拳写真美術館」に変わりました。
住所 山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
電話 0234-31-0028
公式HP http://www.domonken-kinenkan.jp/

取材後記

『古寺巡礼』の、室生寺の十二神将立像を撮った1枚が、とても印象に残りました。暗闇の中、優しい顔で立つ像にだけ光が当たっていてとても美しく衝撃を受けました。もっと土門拳の作品を見てみたいなと思いました。(髙橋)
展示されていない写真や実際のフィルムを収蔵庫内で見せていただいたり、作品や展示の裏側にも触れながら解説いただいたり、多くの写真を通じて土門拳の性格や写真に対する思いを感じることができ、とても楽しい時間でした。(鈴木)


「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=間真由美 / 協力=土門拳記念館、鶴岡中央高校


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この記事を書いた人

Cradle Editors

庄内の魅力を発信する、出羽庄内地域文化情報誌「Cradle(クレードル)」を隔月で発行。庄内に暮らし、庄内を愛してやまないメンバーたちの編集チームです。

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