イベント・お知らせ
庄内ふむふむふむ6「加茂水族館」
酒田南高校 生徒取材
ふわふわと漂うクラゲたちを一目見ようと、国内外から日々たくさんの人が訪れる鶴岡市立加茂水族館。クラゲとの出会いと歩み、運営方針や思い描く未来について、館長の奥泉和也さんに伺いました。

どれくらい、クラゲがいるの?
取材時に展示されていたのは全部で79種類。展示種類数世界第1位で、2位の水族館の倍近い種類のクラゲを見ることができます。

昔から、クラゲを展示していた?
開館したのは1930年ですが、初めてクラゲの展示を行ったのは1997年春のこと。「サンゴとサンゴ礁にすむ魚たち」という企画展示の準備をしていた際に、たまたま水槽に入り込んでいたサカサクラゲを見つけ、飼育し後日展示したところ好評だったことをきっかけに、クラゲ展示に力を入れ始めたそうです。飼育ノウハウがないゼロからのスタートでしたが、クラゲ飼育・繁殖研究の第一人者である柿沼好子氏に指導を仰ぎ、その教え子である研究者・水族館関係者とも情報交換しながらノウハウを蓄積し、展示種類数で2000年に日本一、2005年に世界一になりました。
どうして世界一になれた?
「理由は大きく4つあると思います」と奥泉さん。「1つ目は、柿沼先生はじめたくさんの方にご指導いただいたこと。柿沼先生の功績がなければ、どこの水族館でもクラゲ展示が実現できていなかったといわれています。2つ目は、喜んでくれるお客さんの存在です。私たちもうれしくなるし、頑張る原動力にもなりますからね。3つ目は、大規模な設備が必要なかったこと。シャチやジンベイザメなど、目玉になりやすい大きな生き物を展示しようと思えば高額な設備が必要になりますが、クラゲはビーカー1つあれば繁殖させることができるので、その点もよかったんです。これらの条件がそろった上で、4つ目、これが最も大事なことですが、うまくいかないことも含め自分たちが一番におもしろがり、工夫を重ねてきたことです。飼育をスタートした当時は4人しか飼育スタッフがおらず、他の生き物の世話をしながら展示種類数を増やしていくには大幅な作業効率化が必要でした。試行錯誤の末、クラゲの生態の把握と効率化の両立に成功し、当館では今でもその方法でクラゲのお世話をしています。また、体が柔らかくて泳ぎも得意でないクラゲを、どうしたら長生きさせることができるのか、じっくりと観察しながら改良を重ね水槽も独自で開発しました」。
飼育だけでなく、一晩中クラゲの水槽をライブ配信する「オールナイトカモスイ」や、大水槽前での音楽ライブなど、クラゲたちのことを知ってもらうさまざまな取り組みも、すべてスタッフさん同士で知恵を出し合い企画・運営しているそうです。




水族館同士の交流はある?
これまで国内から数十、海外から10近くの水族館が研修に訪れ、加茂水族館のノウハウを学んでいったといいます。独自開発の水槽についても、あえて特許申請をせず、国内外のたくさんの水族館や研究者に使ってもらっているんだとか。世界水族館会議など、たくさんの水族館関係者が集まる場に参加する際は、交流だけでなく、可能な限りクラゲ調査も行うようにしているそうです。

クラゲの他には、どんな生き物が?
「地域の生き物を知ってもらうことが、地域の水族館としての役割」という考えから、クラゲの一部とアシカやアザラシ以外は、鶴岡で見ることができる生き物が展示されています。また、それらを取り巻く周辺環境まで知ってもらえるよう、加茂水産高校の生徒さんが企画した水槽や、地域の漁業や季節ごとの海産物と食べ方の紹介なども展示されています。
ゴミも展示されている?
観光施設というイメージが強い水族館ですが、教育施設としての役割が実はとても重要で、海洋ゴミについて知ってもらいたいという思いで、2020年頃から展示を始めたそうです。庄内浜には中国や韓国のゴミが多く流れ着くため、よくないイメージを抱く人もいますが、同じようにハワイや北米には、日本からのゴミが漂着しているといいます。「2050年には、海の生き物よりも海洋ゴミの重量の方が大きくなると考えられています。美しい海と生き物たちを守るため、みんなに自分事として考えてほしいですね」と奥泉さんは話してくれました。


今後の展望は?
展示種類数を100まで増やすこと、展示の内容を生物学的・教育学的に深みのあるものにすることが当面の目標で、その実現のため2026年にリニューアルを予定しているそうです。「現在クラゲの繁殖を行っているクラゲラボ、ワークショップなどを行っているレクチャールームが手狭になったこともあり、研究棟を新設する計画が進んでいます。現在の6倍近い規模の飼育水槽を設置するラボフロア、マイクロアクアリウム的に小さなクラゲの展示をメインに行うフロア、100人収容できるレクチャールームを備えながら研究や展示も行えるフロアで構成する3階建ての棟で、現在の水族館とも行き来できるつくりになります。これからもスタッフみんなで知恵を出し合い、楽しみながら学びも深めてもらえる、そんな水族館を目指していきたいですね」。





鶴岡市立加茂水族館
住所 山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
電話 0235-33-3036
公式HP https://kamo-kurage.jp/
取材後記

クラゲ愛あふれる館長さんの話が、楽しかったし勉強になりました。独自の視点で道を切り拓く人だけでなく、全力で後方支援をする人も必要という、組織についての考え方も、印象に残りました。(佐藤)
クラゲが長生きできるよう水槽内の水流の向きや強さを研究するなど、美しい展示を支える努力の蓄積を知ることができました。海洋ゴミの展示を見て、できることから実践していきたいと思いました。(長谷部)
「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=本間聡美(Harvest) / 協力=鶴岡市立加茂水族館、酒田南高校
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Cradle編集部Cradle Editors
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