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庄内ふむふむふむ⑨
「山王くらぶ」
酒田光陵高校 生徒取材

イベント・お知らせ

庄内ふむふむふむ⑨
「山王くらぶ」
酒田光陵高校 生徒取材

2024/12/28

酒田の観光スポットとして、 近年は海外から訪れる方も増えているという山王くらぶ。 今から約130年前にどのような経緯で建てられ、 地域とともに歩んできたのか、 歴史と現在の姿について伺いました。

(左から)酒田光陵高校2年 石橋 結夏(ゆうか)さん、酒田光陵高校2年 佐藤 未来(みく)さん、山王くらぶ 加藤 明子さん

山王(さんのう)くらぶって?

1895(明治28)年に建てられた、酒田市日吉町にある国の登録有形文化財で、元々は「宇八楼(うはちろう)」という料亭でした。数々の名建築を手がけた当地の棟梁、佐藤泰太郎の手によるもので、市の文化財にも指定されている代表作の木造六角灯台は、現在も日和山公園で見ることができます。

当時の酒田の様子は?

江戸から明治にかけ、北前船の寄港地として各地からさまざまな物や人が集まり、文化交流や経済の重要拠点として全国有数のにぎわいを誇った酒田。料亭は、商談に訪れたお客さまをもてなす場として、特に地元商家の旦那衆にとってはなくてはならない存在であり、近隣には宇八楼だけでなく多くの料亭が軒を連ねていたそうです。

細やかな装飾が随所に散りばめられている一方、保存状態もよいことから、建物のつくり自体が「いい仕事」であることがわかる。

宇八楼が建てられる前年の1894(明治27)年に、庄内北部を震源とする大地震「庄内地震」が発生し、酒田のまちは大きな被害に見舞われました。「何よりも先におもてなしの場を」と自分たちの住居よりも優先して、商家の旦那衆が復興に尽力したのが料亭街で、宇八楼もそうして建てられた料亭の1つです。「自分たちの商売こそ、酒田の力」という誇りを持ち、地域との関わりを大切にして商売をしていたことが感じられるエピソードですね。

今も料理は食べられる?

現在は料亭として営業していないため、残念ながら料理を味わうことはできませんが、部屋などはほぼそのまま残されていて、当時の雰囲気を味わうことができます。職人たちのこだわりが今なお息づく、良質な材料で丁寧に仕上げられた内装は、特に欧米からのお客さまに人気だといいます。また、「傘福」の常設展示も行われており、さまざまな素材や色使いの傘福を見ることができます。

傘福って?

中には、数が少ない「隠れキャラ」的な飾りもあり、運よく見つけて、そのありかを誰にも言わなければ幸せになれるんだとか。

江戸時代から酒田でつくられてきたつるし飾りで、静岡県伊豆稲取の「雛のつるし飾り」、福岡県柳川の「さげもん」と並ぶ、日本三大つるし飾りの1つです。無病息災、家内安全、安産、子宝、豊漁など、それぞれの飾りに願いを込めお寺や観音堂に奉納してきたのが始まりで、今でこそ華やかな見た目をしていますが、かつては自分の着物や古い布団の布・綿を使ってつくられていたそうです。

このような「信仰の傘福」がある一方で、宝袋、瓢箪(ひょうたん)、打ち出の小槌など商売繁盛を願った縁起物を飾る「宝づくしの傘福」が古くから大切にされてきているのは、酒田が北前船で栄えた商人のまちである証だといえるでしょう。色やデザインになじみがあるためか、傘福は中国など東アジア圏の方々に人気が高いそうです。


傘福飾りの製作も体験。実際の飾りも、すべて手縫いでつくられているそう。

かわいいねずみの出来上がり!

高校生の皆さんへ

「料亭として始まり現在のような観光施設になるまで、この建物はさまざまなことに使われてきました」と加藤さん。記録が残っておらず細かな変遷まではわからないそうですが、会社の寮として使われていた時期もあったんだとか。

「130年近い長い歴史の中で、何度も持ち主が変わってもこれだけきれいな状態で建物が残っているのは、湊町酒田を象徴するこの建物を守っていきたいという思いを、みんなが持っていたからだと思うんです。館内のしつらえや展示物を見てもらえれば、その思いも感じられると思います。高校生の皆さんも、ぜひ1度遊びに来てくださいね」。

数多くの美人画を描いた竹久夢二が、酒田滞在中に愛用したという「夢二の間」

山王くらぶ
住所/酒田市日吉町2丁目2-25
電話/0234-22-0146
https://sannoukurabu.info/

取材後記

山王くらぶを現在までつないできてくれた人たちの温かい気持ち、地域を大切にする心を感じることができました。酒田の歴史や文化をもっと深く知ることで心の豊かさを育み、私自身も地域に貢献していきたいと感じました。(石橋)

130年近い年月を経ても古びないデザインから、確かな技で思いを込めてつくられた建物であることが感じられました。また、傘福の製作体験で、昔の人に倣い大切な人のことを考えながら縫ってみたら心がとても温かくなりました。(佐藤)


「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=間真由美 / 協力=山王くらぶ、酒田光陵高校


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この記事を書いた人

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庄内の魅力を発信する、出羽庄内地域文化情報誌「Cradle(クレードル)」を隔月で発行。庄内に暮らし、庄内を愛してやまないメンバーたちの編集チームです。

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