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庄内ふむふむふむ12「鳥海山」
遊佐高校 生徒取材

イベント・お知らせ

庄内ふむふむふむ12「鳥海山」
遊佐高校 生徒取材

2025/09/25

2016年9月、地質学的意義、自然環境や人々の暮らし、文化を守る取り組みで、日本ジオパークとして認定された「鳥海山・飛島ジオパーク」。その中心的存在である鳥海山について、さまざまなスポットを案内していただきながら、お話を伺ってきました。

(左から)鳥海山・飛島ジオパーク 推進協議会 大野希一(まれかず)さん、遊佐高校3年、小松萌優(もゆ)さん、遊佐高校3年 松本直也さん、遊佐町地域おこし協力隊 渡辺力(りき)さん

鳥海山って?

標高2236m、日本百名山の1つにも数えられる活火山です。庄内から見ると遊佐町にあるように見え、山頂も遊佐町にありますが、山としては秋田県にもまたがっています。雪が積もった様子が富士山に似ていることから、「出羽富士」と呼ばれることもあるようです。

噴火で大きくなってきた?

活火山である鳥海山は、噴火を繰り返し、それにより噴き出た溶岩が積み重なることで大きくなってきた山だといいます。何層にも重なった地層や、部分的に崩れた地形など、噴火を繰り返し大きくなった過程を5合目地点の鉾立(ほこだて)で見せてもらいましたが、確認できるスポットは他にもいくつもあるそうです。今から50年ほど前、1974年にも噴火が発生しています。幸い大きな被害はなく、それ以来噴火は発生していませんが、活火山であるため、この先噴火する可能性も十分あるそうです。

鉾立の展望台からは、何層にも重なった溶岩がはっきりと確認できる。

豊かな湧き水は、噴火の賜物?

鳥海山が火山であることは、遊佐町の湧き水の豊かさにも関係しています。高温の溶岩は冷えながら流れ続けますが、冷え固まった表面の〝殻〟が溶岩流の下に巻き込まれると、溶岩と地面の間にガサガサとした隙間が生まれます。この隙間に浸み込んだ雨水や雪どけ水が、長い年月をかけて地中を移動し地表に出てきたものが、湧き水です。遊佐町に湧き水が見られるのは、鳥海山が溶岩の層が重なって形成されているからこそなんです。

鉾立ビジターセンターでは、鳥海山の成り立ちを解説したパネルや模型、岩石、山の生きものの剥製などを見ることができる。

神社の位(くらい)にも、 噴火が影響?

山頂にある「御本社」、麓にある「吹浦(ふくら)口ノ宮」「蕨岡(わらびおか)口ノ宮」の3社からなる、鳥海山大物忌(おおものいみ)神社。神社の格式の指標となる位階や勲等において、正一位勲三等を朝廷から授けられた、とても位の高い神社です。鳥海山が噴火を繰り返すのは、山にいる大物忌神の怒りが原因だと考えた朝廷が、怒りを鎮めるために位を上げてきたという経緯があるそうです。鳥海山の噴火は地形など自然環境だけでなく、地域の文化形成にも大きく関わってきたことがわかります。

神社の歴史については、吹浦口ノ宮で髙橋宮司さんから直接お話を伺った。

海沿いにも、噴火の跡が?

鳥海山麓の海沿いの観光スポットの1つ、十六羅漢岩。16の僧侶と、釈迦牟尼(しゃかむに)、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、普賢菩薩(ふげんぼさつ)、観音、舎利仏、目蓮の22体の石仏は、江戸から明治にかけ当地の海禅寺21代寛海和尚が、漁師などの海上安全祈願、海難事故で亡くなった人たちの供養のため、地元の石工たちを指揮し5年以上かけて彫り上げたものだといわれています。この彫られた岩も、鳥海山の噴火により流出した溶岩なんです。「流出した溶岩で海岸が突き出た形になったため、海難事故にあった船や人が流れ着くことが多かったのではないか」と大野さんは推測します。

年々風化してきているという十六羅漢岩。「次世代に受け継いでいく方法を考えるのも、私たちの使命だと思っています」と大野さん。

高校生の皆さんへ

標高1150mの5合目から0mの海岸まで、いろんな話とともに案内してくださったお2人に、最後に「高校生に伝えたいことは?」という質問をしてみました。「まずは遊佐に遊びに来てみてほしい」と話す渡辺さん、移住を決めたきっかけは鳥海山に惹かれたことだといいます。「登るのが大変であれば、近くで見るだけでも違うと思うんです。丸池様や胴腹滝など、鳥海山に関係が深いスポットもたくさんあるし、ぜひ鳥海山を肌で感じてみてほしいですね」。大野さんは、日頃から「なぜ?」を大切にしてほしいと話します。「地元のことって当たり前すぎて、おもしろいトピックがあっても気づきにくいんですけど、『なぜ?』の視点であらためて見てみると、いろんな発見があると思っていて。その発見のきっかけを、たくさんの人に渡していくのが私たちの役割なんですよね。発見が別の事柄とどんどんつながっていくのが楽しいし、誰かに話したくもなるので、学校の授業などでもぜひジオパークを活用していただきたいですね」。

大野さんは推進協議会の事務局次長兼主任研究員を務める。専門は火山地質学。
地域おこしと映像制作、2足のわらじで活動している渡辺さん。47都道府県すべてを訪れたことがある旅好きでもある。

(一社)鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局
住所 秋田県にかほ市象潟町字大塩越36-1 にかほ市観光拠点センター「にかほっと」内
電話 0184-62-9777
公式HP https://chokaitobishima.com/

取材後記

オニヤンマやアリなど、山で出会う虫の大きさに興奮してばかりでしたが、その姿は、遊佐町が生きものも人も豊かに暮らせる環境であることの何よりの証なんだなと思いました。自分も、この豊かさを次世代に受け継ぐ力になりたいと思いました。(小松)

聞いた話も案内してもらった場所も、初めてのものがたくさんあり、生まれ育った遊佐町が魅力あふれる土地であることに気づかされました。今回の経験を活かし、町を盛り上げるために自分にできることがないか考えてみたいと思いました。(松本)


「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=間真由美 / 協力=(一社)鳥海山・飛島ジオパーク 推進協議会 事務局、鳥海山大物忌神社、遊佐高校


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この記事を書いた人

Cradle Editors

庄内の魅力を発信する、出羽庄内地域文化情報誌「Cradle(クレードル)」を隔月で発行。庄内に暮らし、庄内を愛してやまないメンバーたちの編集チームです。

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