物・ものづくり
庄内ふむふむふむ13「槇島ほうき」
鶴岡東高校 生徒取材
今から200年ほど前、江戸後期から庄内町に伝わる「槇島ほうき」。 掃除の主役を退いた今も、多くの人に求められるのはなぜか。 その謎を紐解くべく、お話を伺ってきました。

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槇島(まぎしま)ほうきって?
庄内町の槇島集落でつくられる伝統的なほうきで、200年ほどの歴史があると言われています。庄内の多くの地域がそうであるように、槇島集落でも古くから稲作が営まれてきましたが、近くを流れる最上川が氾濫すると収穫量が大きく落ち込むことが悩みでした。水害が起きても食べていけるよう、槇島ほうきづくりは農閑期の仕事として始まりました。


今でもほうきはつくられている?
掃除機が普及し始めた1960年代頃から、少しずつ需要が減り始め、生産がほぼゼロだった時代も20年ほどあったそうです。復活したのは、2010年のこと。「槇島ほうきで地域おこしをしよう!」というある移住者の声がけに、日下部さんら集落の有志が賛同し「槇島ほうき手作りの会」を立ち上げ、現在は総勢8名のメンバーで活動を続けています。


どうやって、つくられている?
槇島ほうきづくりは、原料となるホウキキビの栽培から始まります。度重なる水害で砂利や砂が多くなった槇島集落の土壌は水はけがよく、ホウキキビの栽培にぴったりなんだそう。5月に畑に苗を植え、8月に2〜3メートルほどに育ったものを刈り取り、すぐに皮をむき乾燥させます。その後、脱穀や選別をし、稲刈りが終わった頃からほうきの製作がスタートします。各工程には、手作りの会のメンバー以外にも、地域住民を中心に老若男女たくさんの人たちがサポートで入ってくれているそうです。

槇島ほうきは、どんなほうき?
竹など別素材の柄を継ぐことなく、7〜8本のホウキキビを束ねてつくられます。ホウキキビの中でも硬い種類のものを使い、中心に木製の杭を仕込むことで耐久性を高めていることも大きな特徴です。「座敷に5年、台所に5年使うと穂先が適度にすり減り、倉庫など農作業の現場で米粒を集めるのにちょうどよくなるんです。他のほうきでは、ここまで長く使うことは難しいと思いますね」と、その丈夫さについて話す日下部さんは、とても誇らしげでした。


槇島ほうきの今、これから。
現在は、10アールほどの面積でホウキキビを育て、年間30本ほどのほうきをつくっています。実用性の高さが特徴の槇島ほうきですが、現代の生活スタイルに合わせ美しさも意識してつくっているそうです。「掃除道具としてではなく、工芸品として飾る目的で買ってくださる方も少なくないため、糸の色の組み合わせや巻き方などを工夫し改良を重ねています」。
また、幼稚園から高校まで、さまざまな年代の子ども向けにほうきづくり体験も行っているといいます。「ただ知ってもらうだけではなく、つくる体験を楽しんでもらうことで、このほうきのことをより深く理解してもらいたいと思っています。その子たちの中から、未来の槇島ほうきづくりの担い手が出てきてくれたら、本当にうれしいですね」。




高校生の皆さんへ
「考え工夫し、改良を重ねること」。農家でもある日下部さんが、農業でもほうきづくりでも、とても大切にしていることです。そして、私たち若い世代にも、このことを大切にしてほしいと日下部さんは言います。「学校の勉強でも、これから社会に出て取り組む仕事でも、何をするにも一番大事なことだと思っています。進みたい道が見つけられずに悩んでいる人もいるかもしれませんが、このことを大切にさまざまなことにチャレンジしていけば、必ず自分が輝ける道が見つかると思います。応援しています」。


槇島ほうき手作りの会
電話 0234-42-2922(庄内町観光協会)
取材後記

槇島ほうきのことは知っていましたが、手づくりだと知って驚きました。江戸時代にはすでにあったこと、時代に合わせて糸の色や柄などに工夫がされていることなどたくさんの発見があり、庄内についてもっと知りたくなりました。(石井)
体験させてもらった杭の仕込み作業、とても難しかったです。この大変な作業に手を抜かずに向き合うことが、何十年も使える耐久性を支えていると実感できました。ほうきづくりという、伝統をつなぐ仕事は素晴らしいと感じました。(渡部)
「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=間真由美 / 協力=槇島ほうき手作りの会、鶴岡東高校
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Cradle編集部Cradle Editors
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