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庄内ふむふむふむ14「酒田船箪笥」
酒田光陵高校 生徒取材

歴史・伝統

庄内ふむふむふむ14「酒田船箪笥」
酒田光陵高校 生徒取材

2026/03/26

酒田・庄内の経済や文化の発展の力となった、北前船。その航行を支えた船箪笥(ふなだんす)を甦らせ、地域を盛り上げていこうという動きがあります。中心人物である加藤渉さんに、お話を伺いました。

(左から)酒田光稜高校ビジネス流通科2年 髙田雛愛(ひな)さん、酒田光陵高校ビジネス流通科2年 伊藤妃奈子(ひなこ)さん、加藤木工 加藤渉さん

船箪笥って?

国内の物流において、海運が重要な役割を担っていた江戸から明治にかけ、船上で大切なものの保管に使われた箪笥のこと。航行に必要な許可書類や印鑑、現金など貴重品を入れていた「懸硯(かけすずり)」、商売に必要な書類や帳簿を入れていた「帳箱(ちょうばこ)」、船員たちの着物を入れていた「半櫃(はんがい)」と、用途に合わせたサイズごとに名前があり、「船箪笥」はその総称です。

漆の艶と欅の木目、鉄製の装飾金具の組み合わせがとても美しい。

普通の箪笥と、どう違う?

長期間の航海にも耐える堅牢さ、万が一のときにも沈まない浮力の高さ、この2つが普通の箪笥との大きな違いです。箪笥の外側には欅(けやき)など堅い木材を用い、漆を塗り、要所に鉄の金具を付けることで堅牢性を高めています。一方、内側には調湿性に優れた桐を用い機密性を上げることで、高い浮力を実現しています。漆の塗装には、木の継ぎ目からの水の浸入や空気の漏れを防ぐ働きもあり、堅牢さだけでなく浮力アップにも一役買っているそうです。また、特に大切なものを収納するために細工がされた、隠し引き出しが施されたものがあるのも特徴の1つです。

どうして酒田で船箪笥?

当時、北海道・東北と大阪を結び物流を支えた北前船。その重要な寄港地の1つが酒田だったことが、主な要因だと考えられています。福井県三国町(現・坂井市)、新潟県佐渡郡小木町(現・佐渡市)と並び、船箪笥の3大名産地に数えられています。

時代が変わり、船箪笥は。

鉄道の普及などにより明治後期には北前船の航行が大幅に減少し、船箪笥も本来の役目を終えることになりました。家具として用いられるなど、その後も人々の暮らしを支えてきましたが、ライフスタイルの変化により需要が激減し、現在は美術品として楽しまれることがほとんどだといいます。3大名産地でも、佐渡ではもうつくられなくなり、酒田でも現在つくっているのは加藤木工1社になってしまったそうです。

現存する船箪笥は歴史あるものが多く、触れられる機会がなかなかないが、実際に触らせていただき、隠し引き出しも発見することができた。

酒田船箪笥の今、これから。

創業96年の加藤木工を、4代目として営む渉さん。従事してきたインテリア関係の仕事を辞め家業を継いだのは、2019年のこと。実はその時点では、酒田でも船箪笥の生産が途絶えていました。「酒田はもとより、日本全国の経済発展や文化交流に貢献した北前船。その航行を支えた船箪笥を、酒田の伝統として未来につないでいきたいと思ったんです」。その強い思いを胸に、早速酒田船箪笥の復興に向けて動き始めた渉さん。前職での経験を活かし海外市場をメインに据えた戦略を立て、パリやロンドンなどの展示会に出展し数々の賞を受賞してきました。その大きな成果の1つとして、今年の10月にルーブル美術館の展示会に出展することが決まっているそうです。

木工体験では、製品の仕上げ作業に挑戦。

高校生の皆さんへ

仕事の創出と経済の発展。船箪笥復興の先に、渉さんが描く展望です。「現在も、すべての工程を自社で完結させず、他社さんにお願いできる部分は外注するようにしています。少しずつでも地域で仕事を生み出し、酒田で働き暮らすという選択ができる人を増やしていきたいんです」。復興に取り組み始めて以来続けてきた光陵高校との連携にも、そのような思いが込められているようです。「今は装飾金具の製作で関わってもらっていますが、プロモーションの方法や売り方など、もっともっと連携できる部分はあると思っています。光陵高校生に限らず、これからの地域を担う若い世代にどんどん関わってもらって、船箪笥を世界中に広めていきたいですね」。

加藤木工
住所 酒田市北今町7-47
電話 090-5671-5410
HP https://katomokko.com/

取材後記

材料の木目がそれぞれに違い、船箪笥はすべてが1点物ということが素敵だなと思いました。また、材料の組み方や漆の塗装で、丈夫で水に沈みにくいつくりにする技術も素晴らしく、地元酒田に船箪笥があることを誇りに思いました。(髙田)
海外にターゲットを絞った販売戦略を立てている点に興味を持ちました。酒田に来るクルーズ船にPRするなど、ビジネス流通科で学んでいることを活かし、船箪笥を未来につないでいくための取り組みに挑戦してみたいと思いました。(伊藤)


「庄内ふむふむふむ」は 庄内2市3町「庄内広域行政組合」、 山形県庄内総合支庁が応援しています。
取材・編集・文=クレードル編集部、工藤拓也 / 写真=間真由美 / 協力=加藤木工、酒田光陵高校


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この記事を書いた人

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庄内の魅力を発信する、出羽庄内地域文化情報誌「Cradle(クレードル)」を隔月で発行。庄内に暮らし、庄内を愛してやまないメンバーたちの編集チームです。

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