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【連載】四十路のハイジ 第10回 今年も山は開いてゆく

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【連載】四十路のハイジ 第10回 今年も山は開いてゆく

2020/05/30

先行き不透明からやや透明に

みんなが平等に大変で心配事のあるこの状況で、どうなるのかな?と思っていた夏山の準備が始まりました。
4月の段階では先行き不透明で「避難小屋でもあるから小屋は開ける」ということ以外何も決めることができずにいましたが、この後も状況を見ての判断にはなってゆきますが、このままでしたら宿泊人数は制限しつつ他は通常営業と言うことになりそうです。今のところ宿泊の予約はほぼないので、毎年来てくださる方がお泊まりになるくらいかな?という予測です。

突貫工事のような荷揚げ準備

早々から準備が始められなかったので、5月の中頃から慌てて買い出しをしました。今年は通販で買ったものも多く荷物が毎日届く届く、玄関がダンボールで埋め尽くされていき配送の方達も何事だろう?と思ったことでしょう。

また、本当にありがたいことに昨年お泊まりになられた山マダムがマスクを300枚寄付してくださいました。たまたまお泊まりになられたマダムで、その時お土産に沢山のパンを下さったのですがそれがお江戸地元の大変お世話になっているパンやさんのものだったのです。運命的な出会いに心を寄せていただけたのか、今年の山行に持っていくはずだったというお酒や食べ物を山のように一緒にお送ってくださいました。そのパン屋さんでも「山ガール」と呼ばれているほど地元では有名な山マダムに大感謝です。

そんなこんなでヘリ一斉荷揚げの日

荷物の量が少なく閑散とした早朝の8合目駐車場。

「夏山くるぞ、よしやるぞー!」という気持ちも中々湧かないまま5月26日、ヘリでの一斉荷揚げの日がやってきました。(荷揚げの詳細は第4回目でも。)

荷物をハイエースに積み込み、今年も早朝から8合目駐車場でパッキング作業になりました。山の朝はまだまだ寒く、寒がりの私はダウンを着ての作業です。うちの小屋以外は前日までにパッキングを済ませているので着いた時には駐車場に荷物が並んでいるのですが、その数が例年より少なく先行きの不安が少しだけ押し寄せました。また今年は里では雪が全く積もらなかったので夏山の水不足も心配していたのですが、山の上は驚くほどの残雪でこちらに関しての不安は払拭されました。

里には全然雪が積もらない冬でしたが、山の上は例年にない残雪に驚く。

ヘリが飛ぶ1時間くらい前になると、準備に関わる方々が次々と集まってきました。9合目の作業に携わる方は去年と変わらずトイレの整備をする鶴岡市の職員さんや羽黒町観光協会と山形県自然公園保全整備促進協議会羽黒支部の方、そして毎年早朝のパッキングから協力してくださる和光食材の社員さんでほぼ昨年と同じ顔ぶれです。ヘリで9合目まで上がり昨年と同じ作業が淡々と行われていきます。そしてそのみなさんの協力のおかげで山の準備が着々と整っていくのです。主人と私だけでしたらとても1日では終わらないでしょう。本当に多くの方の協力があっての夏山なのです。

車で運んできた荷物をなるべく綺麗に、立方体になるように積み上げるパズルのような作業。
荷物をビニールシートでくるんで、ひも状のもっこを掛ける。
準備完了、人々とヘリを待ちます。
お待ちかねのヘリ登場。今年は頂上経由だったので数分長く乗った。楽しくもあるけれど着陸するまでやっぱり怖い。
なんとこんなところにヘリが着陸するのです。
いよいよ荷物が上がってきました。
風圧に煽られながらの荷物受け取りを間近で見るのは、毎度ドキドキします。
重たいカスボンベを、男性たちが運んでゆきます。
降ろされた荷物をローラーコンベヤで室内に運び入れ、必要な部屋に仕分けします。

ハイジの心も着々と

山の準備が整っていくとグラついていた自分の心も整っていきました。状況に合わせた対応は必要ですが、世間を見すぎて今年は消極的に営業しないといけないんじゃないかと必要以上に心が萎縮していたようです。

何も宣伝せず粛々と山の上にいようと思っていたので、四十路のハイジ通信もどうしたものかと悩んでおりました。しかし、これだけ協力してくださる方がいて納入される品々にも関わっている人がたくさんいる。今年は営業をすること自体良いことと思わない方も沢山いるだろう、不謹慎と言われるだろうか?しかし自分たちが批判されたくない為にせっかくみんなで準備した山小屋を、山に上げた商品を必要以上にこっそりすることはないと気持ちが改まりました。

準備が終わって下山です。この時期は登山道が雪で途切れとぎれ、藪の中も歩きます。
毎年多く雪が残る箇所。ここをギャロップで跳ねながら下るのがハイジの楽しみ。

営業するならできる限りのことをする、山に上げた商品をできる限り売るぞ!協力してくれている方達の気持ちを無駄にしないぞ!山の魅力をお伝えするぞ!と江戸っ子の義理人情が熱く煮えたぎり残雪も溶かしそうな勢いで山をあとにし、山の仲間との小さな決起集会を開いて飲んで飲んで酔いつぶれて眠るまで大いに飲んで荷揚げの日が終わりました。夢に河島英五も出てきませんでしたし、目を覚ましてもクールダウンはしていません。(すみません、中高年にしかわからないことを言いました。汗)

ということで6月末からまた山に上がり、皆様にお会いできるのを楽しみにしながら暮らすことが決まりました。よろしくお願いいたします!

渡邉ガイドが撮ってくれた夫婦写真。今年の夏山もよろしくお願いいたします!

この記事を書いた人

Kazama Emi

東京の海抜0メートル地帯で生まれ、40歳で鶴岡へ単独Iターン。月山が開く夏の間は、嫁いだ主人の営む月山佛生池山小屋へ移動し山で暮らす四十路のハイジ。本業はイラストとデザイン、夏の間は標高1,745mからデータ送信しています。

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