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庄内の風土が育んだ 鶴岡シルクと未来へ繫ぐ「kibiso」

物・ものづくり

庄内の風土が育んだ 鶴岡シルクと未来へ繫ぐ「kibiso」

2019/12/11

鶴岡シルク代表 大和匡輔さん

シルク製品が出来るまでにはたくさんの水が必要です。鳥海山や月山の伏流水に例えられるように、庄内は水資源にも恵まれていて、しかも軟水。これこそが柔らかい風合いの鶴岡シルクの特徴であり所以。この優しい肌触りからみなさんはどんなことを感じとるでしょうか。

今回はクレードルオンラインショップでも売れ筋商品のひとつで、「kibiso」をプロデユースする鶴岡シルク代表大和匡輔さんに、ものづくりの裏側を訪ねました。

戊辰戦争と鶴岡シルク

開墾時の面影を残す「松ヶ岡開墾場」

明治維新の折、戊辰戦争に敗れた庄内藩。その後旧藩士たちは日本の輸出産業の要である生糸の生産により、国の近代化に貢献することで賊軍の汚名を晴らそうとこの地を開墾し桑の木を植えました。

一説によると戦では3000人の庄内藩士が戦いましたが、実際には武士だけではなく、農民や町民も一丸となって戦いに馳せ参じたとも。これは他の藩には例がないことで、だからこそ、開墾時には武士と農民、町民という肩書きを超え、刀を鍬に持ち替え力を合わせて開墾することができたとも言われているそうです。庄内藩にはその団結力と慈しみがあったからこそ、実際には戦死した藩士はひとりもいなかったのだとか。

鶴岡が一大シルク産業の地へ、そして日本におけるシルク産業の衰退

松ヶ岡開墾場二番蚕室に期間限定で「kibiso」ショップをオープン。商品を直接触れてみることができます

米沢藩から分けてもらった桑の苗を植えてから育つまでの3年間、武士の娘たちは富岡製糸場で製糸技術を学びました。そうやって少しずつ体制を整えながら、全国でも最大規模となる東京ドーム67個分に相当する桑畑を作ることに成功。

その後大きく発展するきっかけは「斎外式力織機」を発明した鶴岡出身の発明家斎藤外吉。それまで和装用の生地しかできなかったのが、この自動力織機では広幅とよばれる洋装用の生地を作れるようになったことで、輸出産業としてさらに生産に弾みがつきました。

産業に不可欠な人を育てるための現鶴岡工業高校(染色学校)、現鶴岡中央高校(家政高校)の発祥もここがルーツ。そうして鶴岡のシルク産業に携わる就業人口は6割を占めたといいます。結果「養蚕」、「製糸」、「製織」、「精練」、「染色・捺染」「縫製」まで絹製品に関する作業をひとつの地域で行えるように。その後太平洋戦争で技術開発が衰退し、安価な製品が主流になると日本のシルク産業は衰退の一途をたどります。

鶴岡シルクとその技術を後世に繋ぎたい

東京に進学し、そのまま製薬会社に就職した大和社長がUターンしてきたのは今から25年前。

日本のシルク産業全体が傾き需要も供給もない中、それでも大和社長のお父様は「鶴岡に1軒でもシルクに関わるところがあれば絶対にこの産業をやめてはいけない」と、語っていたそうです。

大和社長の心を動かしたのはそんなお父様の言葉や、地域振興に奮闘した富塚陽一元鶴岡市長、旧庄内藩主酒井家17代目の酒井忠明当主らの、鶴岡のシルク産業とその技術を残すためにどうにかしたいという諸先輩たちの想いでした。

大和社長は様々な方法を探りながらも「3000年も続いたシルクの歴史が、たった60年や70年でできた合成繊維に負けるはずがない」という信念のもと動き続けると、あるひとつの出会いによってその想いが紡がれることになります。

「kibiso」をフラッグシップに一周遅れのトップを走る

きびそは蚕が繭を作るときに最初に吐き出す糸で、太くごわごわした材質のもの

シルクは

・紫外線吸収

・抗酸化作用

・抗アレルギー作用

など、様々な機能をもちながら、一切の無駄がないエコロジー素材。さらに蚕はちょっとでも農薬のついた桑を食べると死んでしまうほどの繊細な生き物。そういう訳で桑と蚕はオーガニックな環境でなければいけないのです。

そんなシルクの産地鶴岡にやってきたのが、日本ファッションプロダクト協会代表理事・岡田茂樹氏。製糸工場を見学すると傍にあった「きびそ」に目をやりました。もともとは絹紡糸の材料や飼料として使われていた副産物で、収量としても全体の5%程度ほどしかありません。

それまでパリコレへの出展など世界を股にかけ活躍してきた岡田氏は、蚕が育つオーガニックな環境と本当の意味での「ものづくり」の現場を目の当たりにし、きびそが放つ空気感と素材感に新しい光を感じたのでしょうか。シルク同様、製品にすることを提案しました。さらに著名テキスタイルデザイナーの須藤玲子氏に紹介すると、同じように「美しい!」と興味を示し、プロジェクトが加速的に進行しました。

「太さもばらばらで均一性に欠け、加工しにくい」だから副産物だったのであって、なかなか首を縦にふらなかった製糸職人も、岡田氏の熱意におされ、ついには織り機で織れる太さにまで仕上げることに。水溶性のたんぱく質を含むきびそは、高い保湿力を保有するため、これまでのシルクとも異なる立体感や風合いだったといいます。

大和社長は岡田氏と須藤氏の協力の元、世界に通用するように「kibiso」と名付け、世界的ブランドや、全国のものづくり産地と積極的にコラボレーションしその知名度を高めていきます。そうやって一度は無くなりかけた鶴岡シルクの新たな幕開けがはじまりました。

「うちだけが良くなればいいということではなく、kibisoをフラッグシップにすることで鶴岡シルクを全国、世界に発信する、先輩方の想いであるシルクの産業や技術も次世代へ繋げられるということです。もう一度、一周遅れのトップを走るという気持ちでやっています」と大和社長。

この場所を開墾し産業にしてから150年。

「伝統産業にしては浅い歴史だからこそ新しい改革も起こせました。もっと言えば、もともと桑は米沢からもらって、技術はよそから教わったんですよ。これは庄内藩校致道館の教室・徂徠学の、教えあい、学びあいの精神に通じています。伝統やしがらみに固執しすぎず、いいものを取り入れることで進化させることができたんだと思います」

鶴岡シルクの歴史を紡いできた先人が縦糸だとすれば、デザインなど新しいエッセンスを加えた横糸が自分の役割であると語ります。

五感を感じるものづくり、そして場所作り

歴史、先人の想い、そして庄内の風土。様々な折り重ねによってこれまで続いてきた鶴岡シルク。そして「kibiso」を旗印に鶴岡シルクとそのプロジェクトを世界に発信し続ける大和社長に、さらにこの場所の未来を作っていくとしたら?と尋ねると

「元々日本人は感性に優れています。ここには 歴史、自然、文化と、五感で感じられる要素がたくさんあります。全国からそこを求めて面白い発想を持つ人が集い、さらに新しい発想が生まれたらうれしい。物作りや研究はもう都会が最先端ではない時代です」

と、新たな角度から松ヶ岡、鶴岡そして庄内における新しいものづくりと場所作りの未来像を語ってくれました。

今回特別にクレードルオンラインショップで追加商品を扱わせていただくことになりました。贈り物や、自分自身のご褒美にぜひ。

優しいパープルのストールで装いもぐっと上品に/ウールリバース パープル
PC入れやお仕事用に便利/帆布バック 欄間 黒/赤
クレードルオンラインショップでも品切れになるほどの人気商品/スウィングバック
個性的なドット柄も、モノトーンベースで洗練された雰囲気に/ます並べ 白×黒 碁石 全巾 灰

時期によって在庫も様々となりますのでご確認の上ご検討ください。


期間限定kibisoショップ
営業時間:10:00~17:00
定休日:月曜日
TEL:0235-29-1607(鶴岡シルク株式会社)
*期間については鶴岡シルク株式会社に直接お問い合わせください

この記事を書いた人
本間 聡美

本間 聡美Honma Satomi

山形県庄内在住のフリーランスフォトグラファー。地域の広告、各種出版物などの取材・撮影の傍ら、庄内の様々な魅力を伝えるべく活動中。

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