自然・風景
【連載】つめの里山雑記① 14回目の庄内の春
庄内に移住して、14回目の春を迎えた。
鹿児島生まれの私(つめ)にとって、庄内の冬は厳しく、春は特別な季節である。
しかし、今年は暖冬だったため、その厳しさはなかった。その代わりに春の訪れは早く、新型コロナウイルスの出現と相まって、私にとっては慌ただしい日々となった。
特に、春の花の開花は早く、オオミスミソウは2月初め、カタクリも3月初めから咲きはじめた。
草本の花が咲きはじめると、少し遅れてマルバマンサクやオクチョウジザクラなどの木本の花が咲く。そして、その蜜を求めてギフチョウなどの昆虫が姿を現し、野鳥は子育てを始める。あっという間に、春の里山は生きものたちの息づかいでいっぱいになる。
ある晴れた日、3歳になる息子とかあちゃんと3人で春の里山散策にでかけた。歩き始めると、色とりどりの花と甘い匂いが迎えてくれた。
林床に目を向けると、赤いコップの形をしたキノコや巨大なう○こを見つけた。思わず、足をとめて見入ってしまう。そうこうしていると、キツツキのドラミング(木をつつく音)が聞こえてきた。無意識のうちに足はとまり、一瞬の静寂が広がる。
すると、沢の水が流れる音が聞こえてきた。
突然、足元で「カサカサカサ」と落ち葉が動いた。正体はトカゲ。よく見るとその姿は、恐竜みたいだ。もちろん、息子は怖がって触れない。
少し散策しただけでもたくさんのドキドキやワクワクに出会える。それも春の里山の魅力だ。
そして、里山は自然をテーマに生業とする私にとって、生きものと地域の文化を教えてくれる先生である。自ら多くは語らないが、いつも多くの気づきを与えてくれる優しくも、厳しくもある先生だ。
この寄稿では、先生である庄内の里山の魅力や、3歳の息子・もんじと鶴岡生まれのかあちゃんとの家族の里山遊びについて、つづっていきたいと思う。次回からもお付き合いいただければと思う。
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上山剛司Ueyama Takeshi
北海道、長崎対馬と渡り歩き、今では庄内弁も理解できるようになった薩摩隼人。目下の楽しみは、息子とかあちゃんとの週末の里山散策。仕事でもプライベートでも「人」と「自然」の新しいかかわり方について模索中。環境教育工房LinX主宰、自然学習交流館ほとりあ学芸員兼副館長。