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【連載】つめの里山雑記③ 初夏、里山で出会った白い花

自然・風景

【連載】つめの里山雑記③ 初夏、里山で出会った白い花

2020/09/28

大きな葉っぱと白い花の「ホオノキ」

春の花が終わると、初夏の里山は白い樹木の花が目立つようになる。その中でもひときわ目を惹くのはホオノキの花である。昔はその大きな葉っぱで食べ物を包(つつ:ホオ)んだことが、名の由来である。

ホオノキは被子植物(※)の中でも原始的な種類だと考えられ、蜜を持たない。そのため花粉を虫に運んでもらい他の花と受粉する。同じ個体で受粉(自家受粉)しないように、日によって花の性別を変えてしまう面白い植物だ。

※被子植物・・・・種子植物のうち胚珠が子房に包まれている植物。

ホオノキの花は、1日目は雌、2日目は雄と性を変える。写真は2日目と思われる花。

春、ホオノキの冬芽。あの大きな葉もこの芽の中に入っている。

甘い蜜で虫を誘う「トチノキ」

この時期に、ホオノキと並びよく目立つのがトチノキの花である。ほのかに甘い匂いがするトチノキは、たくさんの花と甘い蜜で虫を誘う。

最初に確認した5月上旬は、まだ咲き始めだった。

大きな花を咲かせるホオノキと異なり、たくさんの花をつける。花は下から順に咲いていく。

数日経ったある日、写真を撮っていると、たくさんの花の中に赤色と黄色の印があることに気づいた。

この部分は蜜標(みつひょう)とよび、黄色の印の花は蜜がまだあり、赤色の花は蜜がもうない。花粉を運んでくれる虫たちに効率よく訪問してもらうためのトチノキの戦略である。

一般的に、蜜を出す3日間は花の中央に黄色い蜜標をつけ、蜜を出さない4日目以降になると赤い蜜標になるといわれている。

手間をかけても食べたい「トチの実」

トチノキは秋になると大きな実をつける。食いしん坊の方ならもうお分かりだろう。美味しい『とち餅』の原料である。また、トチの実の食用の歴史は古く、縄文時代の頃には始まっていたといわれている。

秋になると大きな実をつけるトチの実。しかし、残念ながらそのままでは食べることは出来ない。

つるつるテカテカしていてとても美味しそうなトチの実だが、実はそのままでは食べられない。灰汁(あく)抜きをしなければならず、他の植物のよりも手間がかかるといわれている。

そこまで、頑張って食べたいトチの実とはいったいなんなのだろう(笑)。

トチノキは、ミズナラなどのどんぐりと違い、毎年、実をつけることから、安定した魅力的な食料なのかもしれない。そして、何より手間暇をかけてでも食べたくなるほど、美味しいのである(笑)。

2014年 環境教育工房LinXで開催した『森のごっつお♪』でのとち餅づくり。

鶴岡市でのトチの実の利用といえば、朝日地域の行沢(なめさわ)とちの実会さんがつくる「とち餅」が有名。本当においしい(^^) また、とち餅は、鶴岡市域内の多くの料理屋さんやお土産屋さんで食べることができるし、朝日、温海地域ではそれぞれの家庭でばばちゃんたちがつくる。

それ以外にも「とちあられ」や「とちの実アイス」、「とちハチミツ」など、トチの実を利用した食べ物は本当に多いし、美味しい(^^)

鶴岡市大鳥地域のタキタロウ館の「とちあられ」。とちの実の味が濃く、おすすめの一品。
鶴岡市朝日地域で採取された「とちハチミツ」
鶴岡市温海地域にある「キラリ」のとちの実ソフトクリーム。
息子も里山の恵み「とちの実ソフト」をいただく。

初夏に出会ったトチノキは、虫にも人にも美味しい里山の恵みだった。

また、植物は動くことが出来ないからこそ、それぞれに戦略を持っている。私も植物を見習って、自分なりの人生の戦略を考えたいと思う(笑)。

そういえば、最初に紹介したホオノキも葉っぱを利用した「朴葉焼き」という有名な料理がある。まだ、挑戦したことがないので、ぜひ今度作ってみたいと思う。

きっと、新しい里山の魅力を発見することになると思う。そして、きっと美味しいと思う(^^)

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この記事を書いた人

Ueyama Takeshi

北海道、長崎対馬と渡り歩き、今では庄内弁も理解できるようになった薩摩隼人。目下の楽しみは、息子とかあちゃんとの週末の里山散策。仕事でもプライベートでも「人」と「自然」の新しいかかわり方について模索中。環境教育工房LinX主宰、自然学習交流館ほとりあ学芸員兼副館長。

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