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【連載】つめの里山雑記④ 夏の湿地の昼夜の主役たち

自然・風景

【連載】つめの里山雑記④ 夏の湿地の昼夜の主役たち

2020/10/05

昼の主役、ぼくらはアメリカザリガニ!

都沢湿地の昼間の主役といえばザリガニだ。
赤い体と大きなハサミ、そして頑丈な体は子どもたちに大人気だ。

都沢湿地にいるザリガニは赤くないものもいるがアメリカザリガニ。

たまに体の色が赤くないザリガニにもいるが、ここにいるのはすべてアメリカザリガニ(以下、ザリガニ)だ。
そんな彼らは、大正時代に食料として持ち込まれたウシガエル(特定外来生物)の餌として、昭和初期に日本にやってきた。その後は利用されなくなり、もともとの自然環境に影響を与える外来生物として知られることとなった。私の職場の「ほとりあ」でも春から秋にかけて、湿地に罠を仕掛けて駆除を行っている。

都沢湿地での外来生物駆除風景。

人生初めての釣りは「ザリガニ釣り」!

都沢湿地に遊びにくる多くの子どもたちはザリガニ釣りを楽しみにしている。きっと、人生で初めての釣りがザリガニ釣りになるのだろう。もちろん、3歳の息子の初めての釣りデビューも「ザリガニ釣り」であった。オリジナルの釣り竿を作って、ぜひ挑戦してほしい。

※現在、「ほとりあ」にて釣り竿セット(50円)を販売中です。

湿地に竿を垂らす3歳児。その姿は真剣そのもの。さぁ~、釣れるかな?
焦ってしまうと逃げてしまう。最後まで気を抜かないで!
釣れるとこの笑顔。なぜかピースの指が鼻の穴にささっている釣り上げた息子(汗)

食べて環境保全

子どもたちが釣り上げたザリガニはお家にもって帰り飼育することもできる。持ち帰らない場合は、野外に逃がさないように、「ほとりあ」では回収ボックスに入れてもらっている。回収したザリガニや罠によって駆除したザリガニとウシガエルは、2014年から庄内地域の料理店に「食材」として提供している。外来生物を題材とした「いのち」の学びの時間だ。

ザリガニのボイルはなんとワンコインで食べれる。今年は三川町のビストロ・デ・ポンさんに提供中。

今年からはザリガニの粉末化事業も本格化しだした。これまでの捕獲数の傾向から今後はザリガニが増えてくると予測して考えた事業だ。また、粉末にすることで、加工しやすくなり、長期保存も可能になる。今後モニター事業を実施する予定だ(詳細は広報つるおか10月号や「ほとりあ」HPを参照してほしい)。ぜひ、美味しい料理を考えて欲しい(^^)

アメリカザリガニの粉末の「ざりっ粉(仮)」。写真は試作段階のイメージ。

湿地の夜の主役・ホタル

ザリガニが夏の昼の湿地の主役なら、夜の主役は「ホタル」だ。都沢湿地にはヘイケボタルが生息している。別名を「米ボタル」と呼び、その名のとおり日本の水田栽培とともにその数を増やしてきた生きものだ。しかし、農薬や基盤整備、外灯の影響もあり、近年、その数を減らしている。

ヘイケボタル(オス)。オスは発光器が2つ、メスは1つある。一般的にオスの方が目が大きい。

「ほとりあ」では、施設周辺のホタルの生息調査を行う「ホタルワーキングループ(以下、グループ)」があり、2016年から都沢湿地のヘイケボタルの生息調査を実施している。その結果、ホタルの生息には、開けた水面の大きさや数や外灯が影響していることがわかってきた。また、「ほとりあ」と協力して、毎年1回、ホタルを含む夜の湿地の生きものの観察を開催している。

夜のどきどきわくわく観察会の風景。

ホタルの里親プロジェクト

今年、グループでは施設に隣接する水路で発生するホタルを捕獲し、産卵させ、飼育し秋に湿地に幼虫を放流する活動を開始した。この水路は、土水路で近年は業者によって定期的に泥上げ作業がされている。せっかくホタルが産卵し、幼虫になっても、泥は廃棄するため、この水路でのホタルの生息は難しい状況になっている。

この活動は、孵化した幼虫を希望する人たちに秋まで育ててもらう「里親プロジェクト」として進行中である。いろいろな課題がありながらも、参加者と一緒に秋に幼虫を湿地に放流するのを楽しみに活動している。

※この場所から発生するヘイケボタルは湿地まで飛翔することを確認している。飼育した幼虫を放流しても遺伝的な問題にはならない。

7~8月に3回の説明会&譲渡会を開催。15組の里親が誕生し、10月の放流まで幼虫を育ててもらっている。
餌の巻貝(サカマキガイ)を集団で食べるヘイケボタルの幼虫

様々な生きものが主役になる湿地を目指して

もし、これからザリガニが減り、ホタルが増えていくと、湿地の昼と夜の主役は変化するかもしれない。子どもたちの中には、ザリガニが少なくなって悲しくなってしまう子どももいるかもしれない。けれど、その変わりに、もともとこの地域にいた動植物が増えていることを期待したいし、そうなるように努力したい。
そして、都沢湿地を訪れるそれぞれの人が思う生きものが、主役だといえる湿地になることを目指していきたい。里山の主役は、訪れる人がそれぞれ決めてほしい(^^)

ホタルを手に乗せる参加者。なぜか、ホタルの光には子どもも大人も感動してしまう。自然に、小さい生きものに学べる機会があるのも里山の魅力だ。

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この記事を書いた人

Ueyama Takeshi

北海道、長崎対馬と渡り歩き、今では庄内弁も理解できるようになった薩摩隼人。目下の楽しみは、息子とかあちゃんとの週末の里山散策。仕事でもプライベートでも「人」と「自然」の新しいかかわり方について模索中。環境教育工房LinX主宰、自然学習交流館ほとりあ学芸員兼副館長。

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