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【連載】つめの里山雑記⑤ 「都沢湿地のハスの物語」

自然・風景

【連載】つめの里山雑記⑤ 「都沢湿地のハスの物語」

2020/10/06

上池のハス

今年も大山上池にハスの花が咲いた。
8月10日、11日には、江戸時代から続く浮草組合さんによるお盆用のハスの花や葉の刈り取り作業が行われた。大山地域の夏の風物詩である。

上池に舟を出し、ハスの花を収穫する浮草組合の組合員さん。

毎年、8月10日、11日に上池では浮草組合さんによって、お盆に飾るハスのつぼみ、巻葉、果托の販売が行われる。
最近は開花数が芳しくなかったが、今年はそれなりのハスの花が見られた。

2000年前の種子から花が咲いた大賀ハスに代表されるように、ハスは長い期間眠り生き続けることができる植物だ。2014年、「ほとりあ」の横を流れる農業用水路でハスの葉を確認した。きっと、下池に細々と生育しているハスの種子から発芽したのだろう。翌年の2015年には、ハスの花が開花し、水路を埋め尽くしてしまう事態になった。このままでは、水路管理のためにすべて駆除されてしまう。そこで、この水路のハスを都沢湿地に移すことを目的に「ほとりあ」のサポーター有志が『ハスワーキンググループ(以下、グループ)』を発足させた。
全員が60歳以上、平均年齢70歳以上のグループの誕生である。

2015年、ハスの種子採取作業。

やる気充分ではじまったハスを守る活動だが、この後、目的である都沢湿地にハスを移すのには3年間の時間を要した。

2017年、コンテナから人工池に移植
2018年、関係者の合意が得られ、ようやく都沢湿地に移植。

魅力を伝える活動

水路でハスを発見してから都沢湿地に移植するまでの間に、グループでは「ほとりあ」と連携しながら普及啓発活動にも力をいれてきた。なぜ、活動を行っているのか、ハスの生態の魅力とともに多くの人に伝える活動は持続的な環境保全活動を行うために欠かせない。

2015年、地元小学校の総合学習で行ったハスの発芽実験。
2017年、ハスをテーマに開催した里山マルシェ(写真は象鼻杯競争)。

その成果か、コロナ禍の中で開催した今年の「観蓮会」は100名もの人が訪れた。例年、十数人の参加だったのでメンバーはびっくりし、喜んでいた。そして、何より楽しそうであった

2020年、3年目の観蓮会は100名を超える方が参加した。

物語は続く、熱い思いとともに。

平均年齢が70歳を超えるグループの活動は、正直体力的に厳しくなっている。
しかし、その思いは熱い。なぜなら、この活動のきっかけになった前代表(故人)は、東日本大震災後に福島県から鶴岡市に避難してきた方で、この自然環境を愛してやまなかったからだ。いつも、ここの自然環境は本当に素晴らしいといってくれた。メンバーはその思いを受け継いでいるので、会議では毎回、喧々諤々としながらも活動はしっかりと続いている。

2015年、グループ設立時の会議風景。

きっと、その思いは私たちの世代にも必ず引き継がれることだろう。
そして、あまり知られていない都沢湿地のハスの物語はまだまだ続くはずである。

いまでは、都沢湿地のハスを見に多くの人が訪れるようになった。

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この記事を書いた人

Ueyama Takeshi

北海道、長崎対馬と渡り歩き、今では庄内弁も理解できるようになった薩摩隼人。目下の楽しみは、息子とかあちゃんとの週末の里山散策。仕事でもプライベートでも「人」と「自然」の新しいかかわり方について模索中。環境教育工房LinX主宰、自然学習交流館ほとりあ学芸員兼副館長。

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