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Cradle編集長 庄内ひとり歩き②
「梅香る、旧庄内藩校致道館を訪ねる」

観光・街歩き

Cradle編集長 庄内ひとり歩き②
「梅香る、旧庄内藩校致道館を訪ねる」

2020/04/01

3月26日、久しぶりの好天に誘われ、旧庄内藩校致道館に向かった。
もうじき春、そして暖冬の影響でいつもより随分花も早いが、日本中、そして世界中が新型コロナウィルス感染に覆われ、暗雲が立ち込める。平日でもあり訪れる人も少なかった。

致道館は文化2(1805)年に創設された庄内藩藩校である。以前は藩主が御成りの際に使った表御門から入ると、すぐに白梅が姿を現す。少し中に進むと孔子を祀る聖廟の塀際に紅梅、白梅がきれいに咲いている。紅梅の方は満開近く、白梅はまだ3分咲きくらいか。紅梅、白梅とも青空に映え美しい。そして聖廟、講堂など致道館の佇まいの中で静かに咲いているのが何よりも心を潤す。桜のような華やかさはないが、梅の凛とした花が好きだ。

致道館は、江戸の太平の世が続き庄内藩でも風紀の乱れが現れた時、それを正すには懲罰ではなく、教育が大事だと庄内藩主酒井家9代目忠徳(ただあり)公が創設した。当時幕府の方針に従い多くの藩は朱子学を藩学としたが、致道館は荻生徂徠の徂徠学を教学とした。江戸で実践的な徂徠学を学んだ藩士らが藩主に進言し取り入れられた。その特徴は「個性伸長」と「自学自習」の教育指針にある。藩主忠徳が校長にあたる祭酒に宛てた趣意書「被仰出書(おおせいだされしょ)には、人には得手不得手があり、その得手を伸ばすのが教育であるとの言葉が記されている。
その人の個性を伸ばす。そして詰込みではなく、自ら学ぶ楽しみを覚え勉学に励む。今の時代にも通じる大事な教育の原点がそこにある。

藩主忠徳が校長にあたる祭酒に宛てた趣意書「被仰出書」

致道館講堂を進み一番奥にある御入間(おいりのま)は藩主御成りの際に用いた部屋だが、戊辰戦争降伏の際に藩主忠篤(ただずみ)公が新政府軍参謀黒田清隆と対面した場所でもある。上座についた黒田が予想に反し寛大な処分を言い渡した後、座を交替し「失礼申し上げた」と忠篤に謝したという。

御入間

致道館を訪れると、ここには庄内人の大事な精神の源があるといつも感じる。今の庄内の教育の礎をつくった精神、そして、戊辰戦争に敗れた悔しさをじっと腹の底にこらえながらいつか汚名をそそがんとした精神。致道館の梅の美しさに触れ、そのことに改めて気づかされた。

未曾有の困難な局面にあるが、日本のみならず世界の状況をしっかり見つめ判断し、静かに対応していきたい。こういう時こそ、地域の歴史も含め、書をじっくり読むことが求められているのではという気もした。

「君子学んで以てその道を致す」、致道館の名前は論語の一節に由来している。 

致道館の梅は、静かに凛とその花を香らせていた。

この記事を書いた人
小林 好雄

Kobayashi Yoshio

株式会社出羽庄内地域デザイン代表取締役。地域文化情報誌「クレードル」編集長として自らツアーガイドも務める庄内の魅力発掘請負人。

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