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暮らしと一緒に育んでいきたい集いの場

暮らし・ライフスタイル

暮らしと一緒に育んでいきたい集いの場

2020/04/23

「おやつと居場所古今 cocon」(前編)

一年前の夏の日、山王町を車で走っていると、何やら素敵な雰囲気を匂わせている建物が。たしか以前は、お醤油屋さんの看板を掲げていた昭和な一軒家兼お店だったはず。

そうこうしているうちに季節は秋になり、2019年10月、庄内で今ホットな寛ぎの場所「古今(ここん)」がオープンしました。昭和な醤油屋さんは、一面ガラス張りの空間で一杯ずつドリップするコーヒーを飲みながら、生花や庄内選りすぐりのセレクト雑貨を楽しめる複合スペースに生まれ変わったのです。

食を通じて考えた暮らしの大切さ

窓一面がガラス張りで開放感も大

「今は仕事と暮らしを分けて考える時代なのかもしれませんが、私にとって暮らす場所と働く場所がつながっているというのは、ものすごくあんべいいんです」。

古今に流れるゆったりとした空気感の中、オーナーの富樫あい子さんはそう語ります。

農家を営むご主人、息子さんふたりに、取材時はまだ生後2ヶ月!の娘さん3人の子育てに奮闘するお母さんです。

生まれも育ちも生粋の庄内人で、京都や金沢のような古い町並みを現代風にアレンジした暮らしに憧れを抱きながら、いつかは自分もそんな場所でカフェを開けたらと漠然とした想いを胸にいだくように。高校卒業後に勤めていた郵便局を辞め、カフェ作りの修業になればと酒田市光が丘にあるパン屋「メーテール」で働くことになりました。

ここではパン作りだけではなく、日頃から店主が選択する素材、暮らしぶりをみて「食べ物をバランスよく食べることで体調管理ができるんだと、恥ずかしながらその時にはじめて食べ物の大切さを実感しました」。食に対する分岐点と自分の暮らしを省みる大きなきっかけになったと言います。

店内には購入できる工芸作家の作品や雑貨、鶴岡市内の方がセレクトした本コーナー。
本を読みながらコーヒーをいただけます

出産後にチャレンジしたおやつ作りと販売

富樫さんが作ったスイーツ一例。店内で不定期で販売中

4年ほど「メーテール」で働き、結婚妊娠出産を機に退職。その間人生の大イベントである妊娠そして出産を通じて自分の食べているものが子どもダイレクトにつながるということを実感し、ますます食に対して積極的な関心をもつように。

食べ物に直接関わるご主人の農業という職業により誇りを持つと同時に、自分としては流通できないだだ茶豆を使った「枝豆チーズケーキ」の加工・販売にチャレンジしました。これが憧れのカフェに近づく第一歩となります。

子育てもしながら、少しずつ形にして自信をつける中、地元で人気のイベント「こしゃってマルシェ」に参加。同世代のお母さんたちから興味を持ってもらうことで、「安全安心な食べ物を求めている人はきっともっといるはず」という信念のようなものが沸き起こります。しばらくはご主人の実家にある加工場で加工品を製造し、販売するスタイルが続きました。

その間富樫さん家族はアパート暮らし。いつかは古い建物をリノベーションして住みたいという気持ちが、現在の住居兼お店と引き合わせてくれることに・・・。

ビフォー:昭和なお醤油屋さん
アフター:開放感溢れる一面ガラス張りのお店に変身!

空き家を改装しての住居兼お店作り、決め手となったのは

「次に住むお家は住居兼お店が条件でした。だから普通のサラリーマンがローンを組んでお家を買う、という感覚でこの物件を購入したんです」。仕事が忙しくなって子どもが家に帰ってきた時に誰もいない、となるのは暮らしを大切にするあいこさんにとって本末転倒。

そして決め手は「和室の座敷を見た時に、ここがいいなぁと思って、他はどこも見てないんです」。古い町並みや趣味の喫茶店巡りをする中で培われた審美眼でしょうか。いわゆる一目惚れで場所はスムーズに決定。それでも住んで3年後くらいになってから自分がカフェをやるつもりで、住んですぐ何かする予定はなかったのだとか。

購入の決め手となった座敷スペース。襖はご自身で張り替えたそう

商店街の方々からもう少し早くお店をやってもいいのではという勧めもあって、「じゃあ手はじめに日替わりでカフェをやってもらえたらと、現在のカフェスペースを活用してくれている「パラディーゾ」の後藤さんにお声がけしたんです」。

当初はお花屋さんのアイディアもなかった中で、「花のアトリエ チョコレートコスモス」として活動している齋藤さんに、貸す予定はないの?と、尋ねられたことでそういう考えもあるかと、まずはおふたりに使ってもらうことになりました。

「パラディーゾ」後藤さん。庄内のイベントなどで多くファンの心をつかむ人気のコーヒー店主
「花のアトリエ チョコレートコスモス」齋藤さん。もともとワークショップ出店や顧客への販売がメインでしたが、ここにお店を出してから新しい客層が増えました

「自分なりのこだわりもあるし、どちらかと言えばひとりで商売をして完結してしまった方が気楽かなと思ってたんですけどね。今となってはプロのおふたりが作る空間が素敵な場となって、いろんな人も繋いでくださって。自分ひとりでやっていたら見られない景色が広がりました」。

あえて余白を残す楽しみ

カフェ&販売スペースの天井が低くなっているのは昔ながらの町屋の特徴で「厨子二階(つしにかい)」というスタイル。「絶対残した方がいい」と設計士の方からの熱いアドイスでそのまま活かして使うことに。圧迫感を感じそうと思っていたけれど、問題なく過ごせていますと富樫さん
富樫さんの仕事の要となる加工スペース(写真左)と
お花屋さんスペース(写真正面)。限られたスペースを有効に活用

お店奥の座敷スペースはレンタルスペースとして貸し出し中(予約制)。お店に行くと子育て中のお母さんたちの笑顔溢れるシーンに遭遇することもしばしば。座敷であれば赤ちゃんもお母さんも気兼ねなく寛げるという、3人の子育てをする富樫さんならではの発想です。

「実を言うとまだ二階や奥二階は手付かずのままなんです」と笑って教えてくれました。

ゆっくりと時間をかけながら自分たちの手で直していく楽しみをとっておこうと思って。余白っていうんですかね」。

取材した日はコーヒーとうつわの楽しみ展を開催中。多くのお客様が足を運んでいました

オープンからまだ半年。レンタルスペースもその内にこども部屋になるかもしれないし、お店もこれから変わることだってある。お店やレンタルスペースも、個性や自分なりのストーリーを持った人が活用して、いろんな人が混ざり合えば楽しみも倍増していくでしょう。

「場づくりは見えている部分だけではなく、自分も満足していないと楽しめない、だからこそ暮らしに合わせてゆっくりとこの空間をつくっていきたい」。昔ながらの商店街のスタイルって案外今の暮らしにフィットするのかも。気負わず話すオーナー富樫さんの暮らしぶりをみてそう感じました。

たくさんの想いが詰まった「古今」。古すぎても新しすぎても味わえない、ここならではの寛ぎ時間を味わいに、ぜひ足を運んでみてくださいね。

DATA

おやつと居場所古今 cocon
山形県鶴岡市山王町8-18
営業時間:8:30~17:00
定休日:日・他不定休
https://conconcocon.shopinfo.jp

この記事を書いた人
本間 聡美

Honma Satomi

山形県庄内在住のフリーランスフォトグラファー。地域の広告、各種出版物などの取材・撮影の傍ら、庄内の様々な魅力を伝えるべく活動中。
 

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